著者
田代 高章 八重樫 一矢 TASHIRO Takaaki YAEGASHI Kazuya
出版者
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13472216)
巻号頁・発行日
no.8, pp.17-36, 2009
被引用文献数
1

今日、いじめ、不登校、暴力行為、薬物乱用、高校中退など、いわゆる学校不適応とされる問題行動は後を絶たない。文部科学省をはじめ各都道府県教育委員会、各学校などでは、これらの問題行動の実態の把握と、それへの様々な対応に追われている。 対応のあり方としては、近年の少年法改正による厳罰化の動きとも関連して、アメリカのゼロ・トレランス(zerotolerance)の発想をわが国にも応用しようという動きもみられる。 もちろん、一方で、個々の子どもに対するカウンセリングマインドに依拠した対応の必要性も主張される。また、わが国では、教師による子ども理解と信頼関係の構築を基本としつつ、子ども集団の関係を異質協同の自治的関係へと変容させようとする、学級集団づくり・子ども集団づくりといった「生活指導」理論と実践の蓄積もある。さらに、ゼロ・トレランスとしての厳罰主義の動きを批判する見解もある。 近年の毅然たる対応、罰則基準の明確化と周知徹底、罰則に基づく厳しい懲戒といった動向のなかで、暴力行為や中退者など多くの問題を抱える高校現場の実態はどうか、特に定時制高校での実態について、岩手県のケースを参考にしつつ、徒指導についての今日の考え方を概観し、問題行動の現状とそれへの指導の方向性について、考えてみたい。