著者
六人部 慶彦
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.376-380, 2016 (Released:2016-11-09)
参考文献数
10

歯間乳頭は,歯科医師が補綴処置を行ううえで,形態をコントロールできる軟組織の一つであり,再建するためには歯周組織の十分な診査・診断が必要である.下部鼓形空隙にブラックスペースが存在し審美性を損ねている場合でも,補綴を前提とする際には,隣接面歯頸部のフィニッシュラインの設定位置と修復物の形態を症例に応じてコントロールすることにより,ある程度歯間乳頭を再建させることができる.特に前歯部においては,食物の停滞や発音のような機能的な側面に加えて審美性が最優先されるため,下部鼓形空隙のブラックスペースは許容されない傾向にあり,世界的な潮流として歯間乳頭を保存あるいは再建することの必要性がクローズアップされている.その術式も外科的1,2),矯正的3,4),補綴的5,6)アプローチが報告されている.ここでは,天然歯形態から学ぶ歯間乳頭再建のために修復物に与えるべき形態,フィニッシュラインの設定位置などこれら診断の目安となる歯間乳頭の存在に影響を及ぼす要因7)について考察したい.