著者
東野 充成 Mitsunari Higashino 共栄学園短期大学社会福祉学科児童福祉学専攻
巻号頁・発行日
no.21, pp.219-231, 2005-01-01

本研究の目的は、児童買春・児童ポルノ処罰法の立法過程に見られる子ども観を明らかにすることである。自明とされた「子ども」という存在が疑問に付されるにつれて、子どもとはいかなる存在で、人々はそれをどのように認識しているのか、いわゆる「子ども観」を明らかにする研究が盛んに行なわれている。しかし、メディア上に表れた子ども像や子ども観の歴史的な変遷を明らかにした研究は多々あるが、子どもをめぐる法や組織といった狭義の制度を分析した研究は少ない。そこで、本研究では、比較的近年に施行され、きわめて強い強制力を持った児童買春・児童ポルノ処罰法を事例として、その立法過程に表れた子ども観を明らかにした。その結果、「人権主体としての子ども」や「保護の対象としての子ども」といったきわめて常識的な子ども観によって同法は裏付けられつつも、「性的主体としての子ども」や「加害者としての子ども」といった新たなベクトルから子どもを位置づける視点も見られ、これらが葛藤や矛盾をはらみながら、一個の法として形成されていく過程が明らかとなった。