著者
兼古 稔
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.63-67, 2015-02-28 (Released:2015-02-28)
参考文献数
10

回帰熱は回帰熱群ボレリアによる感染症で,シラミなどによって媒介される。世界各地での発症報告があるが,本邦では国内感染報告はなかった。今回われわれはライム病と診断した患者血清から回帰熱ボレリアDNAを検出し,回帰熱と診断したので報告する。患者は30代男性。マダニ咬症を認め自己摘除。12日後に高熱と刺口部周囲の発赤を認め,当科を受診した。遊走性紅斑を認め,抗ボレリア抗体が陽性であったことからライム病と診断し,感染症法に基づく届出を行った。後日,国立感染症研究所によるライム病患者血清の遡及調査で,本症例の血清からBorrelia miyamotoi(以下,B. miyamotoi)のDNAが検出された。B. miyamotoiは1995年に発見されたボレリアで,2010年ロシアでのヒトへの感染報告後,世界各地で感染報告が相次ぎ,“古くて新しい感染症”として最近注目を集めている。マダニ咬症後の発熱患者では本症を念頭に治療を行う必要がある。