著者
北村 淳 宮部 浩道 植西 憲達 加納 秀記 平川 昭彦 原 克子 小宮山 豊 山中 克郎 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.711-715, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
10

致死量の眠気予防薬を服用した急性カフェイン中毒の2 例を経験した。症例1:20代の男性。市販の眠気予防薬を大量内服(無水カフェイン計8g)した。入院後,鎮静薬投与下においてもカフェインの作用による興奮が強く,入院2日目まで痙攣を認めた。第20病日に退院となった。症例2:30代の男性。市販の眠気予防薬を大量内服(無水カフェイン計14g)した。入院後ただちに,血液吸着および血液透析を施行した。人工呼吸管理中に興奮や痙攣などを認めず,第11病日に退院となった。両症例のカフェインおよびカフェイン代謝産物の血中濃度を経時的に測定したところ,血液吸着および血液透析後に明らかな減少を認めた。臨床所見も考慮すると,血液浄化法の早期導入がカフェイン中毒に奏功したと考えられた。致死量を内服した急性カフェイン中毒には,血液吸着に血液透析を併用した迅速な血液浄化法も有効な治療手段の一つであると考えられた。
著者
田島 典夫 高橋 博之 畑中 美穂 青木 瑠里 井上 保介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.656-665, 2013-10-31 (Released:2013-11-25)
参考文献数
12

はじめに:バイスタンダーによるBLS は,実施者に相当な精神的負担がかかると想定されるが,これに関する研究自体が少なく対策も進んでいない。そこで,バイスタンダーのストレス反応を明らかにし,心のケアに関する対策を検討することを目的として調査を行った。対象と方法:2008年8月から2011年10月までの間にバイスタンダーによるBLSが実施されて社会復帰した事案のうち,バイスタンダーの連絡先を把握している事案を抽出し,当該事案の救助に携わった者を対象に面接調査を実施した。結果:多くのバイスタンダーがさまざまなストレス反応を経験していた。また,その体験を他者に話して,自分の気持ちを理解してもらいたいと考える者が多かった。結論:BLS教育において,BLS実施によるストレスとその対処法に関する教育を考慮する必要がある。さらに対策の一環として,相談を受けるシステムを整備することが有用であり,急務であると考えられる。
著者
髙井 美智子 上條 吉人 井出 文子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.22-29, 2015-02-28 (Released:2015-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 or 0

救急医療の現場には,自殺企図や故意の自傷により受傷した患者が頻繁に搬送され,その多くが急性薬物中毒によるものであり,特に向精神薬の過量服薬が大部分を占めている。本研究では,北里大学病院救命救急センターに搬送された急性薬物中毒患者81名(男性:18名,女性:63名)を対象に質問紙調査を実施し,向精神薬の過量服薬の実態および関連する心理社会的要因について検討を行った。80名(98.8%)が何らかの精神障害に罹患していた。自殺念慮の有無における過量服薬した向精神薬の量に違いが認められなかったが,数時間以上前から過量服薬を考えていた患者は,衝動的に過量服薬した患者に比べて,摂取する量が有意に多かった。患者の心理社会的背景として,無職で家族・恋人・友人といった身近な人間とのトラブルを契機に衝動的に過量服薬する傾向が認められた。今後,精神障害の治療に加え心理社会的介入の必要性が示唆された。
著者
後長 孝佳 服部 友紀 安藤 雅規 波柴 尉充 富野 敦稔 宮部 浩道 加納 秀記 津田 雅庸 平川 昭彦 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.546-550, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
10

近年流通している危険ドラッグの主な成分は,合成カンナビノイドと合成カチノン系化合物である。今回,合成カチノン系化合物を含有する「Sex Bomber」を繰り返し飲用し,1カ月間に2度,同様の重篤な症状を呈した急性中毒例を経験した。症例は30歳代男性。3週間前から「Sex Bomber」を飲用していた。興奮・異常行動を認めるようになり,救急搬送された。来院時,興奮・不穏・頻脈・発汗の他,乳酸アシドーシス,横紋筋融解,肝障害,急性腎障害を認め,多臓器障害の状態であった。退院後も「Sex Bomber」の飲用を続けており,1カ月後,再び前回と同様に多臓器障害の状態で搬送された。2回とも経過中にDICに陥ったが集中治療管理により,約1週間で退院となった。合成カチノン系化合物は,組織移行性が高く作用が強力であるため,発症は急速かつ激烈である。急性中毒症例では多臓器不全をきたし死亡する例も散見されており,これら化合物に対する知識に基づいた的確な管理が必要である。
著者
城川 雅光 笠井 あすか
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.461-467, 2014-06-30 (Released:2015-01-23)
参考文献数
9

2004年度から2012年度の小笠原諸島の急患搬送記録を調査し,現状と課題を検討した。搬送例は合計266例であった。搬送患者の特徴は,外傷,脳血管障害,虫垂炎など手術やICU管理を要する症例が多かった。搬送時間は,全島平均で9時間34分と長時間を要する。一方,空港のある硫黄島からの患者搬送は,地理的に遠いにも関わらず,父島と母島の平均搬送時間と比較して45分程度短い。また搬送要請の過程で,結核患者の搬送が問題となっていた。空港建設が進まない現状で搬送時間短縮に有効な手段の一つとして,航続距離,巡航速度,着陸場所の条件を満たすティルトローター機の就航が考えられる。感染症患者搬送については,病原体や利用する航空機を問わず安全性を確保する上で,簡易アイソレーターの搭載が有効であろうと考える。しかし航空機搭載基準を満たしている製品は,国内で取扱い中止となっており,既存の製品で運用試験を行うことが課題である。
著者
齋藤 靖弘 山下 友也 武田 清孝 増井 伸高 松田 知倫
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.39-46, 2017-02-28 (Released:2017-02-28)
参考文献数
15

救急隊員に急性薬物中毒の知識をアンケート調査し,薬剤に関する知識不足から搬送・病院選択に苦慮していることが明らかとなった。そこで,重症急性薬物中毒に陥りやすい薬剤の中で,致死性不整脈へ移行しやすく,PCPS等の補助循環可能な高次医療機関搬送が必要となる三環系抗うつ薬に関して,薬学的知識を補う簡単な手製のリーフレットを薬剤師が中心となって作成し,4消防本部の救急隊員へ配布・説明した。その後,調査票を配り,①薬剤リストから三環系抗うつ薬を選択,②三環系抗うつ薬過量内服患者の観察強化項目を選択する,という2つの項目の正答率ならびに回答率と自由記載コメントから,リーフレットによる教育効果を評価した。リーフレットを作成して救急隊員へ薬学的知識を支援することは,教育効果以外に搬送先選定などの救急対応を改善する効果も期待でき,プレホスピタルにおける薬学的支援の重要性を感じるものだった。
著者
中薗 健一 高野 尊行 根本 真人 長谷川 伸之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.761-765, 2014-12-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
18

集中治療室(ICU)では,時間経過とともに刻々と変化する病態に合わせた薬物治療計画が必要である。そのため,薬剤師による迅速な薬学的介入は重要であると考えられる。今回,ICU専従薬剤師による全身管理への薬学的関与の影響について検討した。方法:那須赤十字病院ICUへ入室した患者を対象とした。2010年1月から12月の270名を専従前群,2013年1月の49名を専従後群とした。薬剤管理指導記録から薬学的介入の内容,薬物治療変更の有無について比較検討した。結果:薬剤管理指導実施率は専従前64.1%から,専従後91.8%へ有意に増加した。薬学的介入による薬物治療変更は,専従前51.3%,専従後73.2%へ有意な増加を認めた。考察:ICUへの薬剤師専従化により,薬学的介入件数,薬物治療変更率はともに増加した。これより,患者の病態変化に合わせた迅速な薬学的介入を行うことができた。
著者
山田 浩二郎 鈴木 明人 山本 直之 須賀 啓臣 天野 尽 茅野 俊幸 杉本 一郎 速水 広樹 杉木 大輔 池上 敬一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.629-637, 2015-10-31 (Released:2015-10-31)
参考文献数
12

目的:平成25年9月2日,埼玉県東部地域に発生した竜巻への対応時に行われた県下初の消防相互応援を受けた警防本部活動を検証し,課題を抽出して,今後の実災害および訓練における進むべき方向を探る。対象と方法:地域MC協議会の承認を受け,各消防組織の活動報告書の収集・関係者へ聴取等を行い,MIMMSの考え方に基づき整理し,まとめる。結果と考察:初期対応;発災は119番通報の集中により認識され,その6分後に警防本部の立ち上げが開始された。一方,発災認識10分後には救急車両は全て出動していた。車両の不足を主因とし,37分後ブロック応援,101分後県下応援要請が行われた。情報収集;119番回線,一般加入電話は応需状態が約90分間連続し,また通報の整理に難渋した。指揮;当初被災地域の把握は,それが細長く形成されたことおよび119番通報応需時出動隊との交信が困難となり遅滞した。その後人員・資器材の充足および被災概要の把握が進み,機能した。指揮支援は発災地域の消防が起案し円滑に実施された。中規模災害時の受援消防本部を想定した訓練が不足していたことなどの課題が明らかになり,今後の施策に生かせるものと考える。
著者
近藤 匡慶 菅谷 量俊 長野 槙彦 磐井 佑輔 金子 純也 諸江 雄太 工藤 小織 久野 将宗 畝本 恭子 村田 和也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.571-577, 2016-08-31 (Released:2016-08-31)
参考文献数
18

目的:バンコマイシン(以下,VCM)負荷投与は,抗菌薬TDMガイドラインに記載されているが,有用性を示す報告は少なく,今回,救命救急センターでの有用性を検討した。方法:トラフ値,治療効果,投与日数等を負荷投与群,通常投与群(以下,対照群)で比較検討した。負荷投与は初日1〜2g投与し,維持投与はトラフ値10〜20μg/mLを目標に薬剤師が投与設計した。結果:負荷投与群7例,対照群21例を認め,トラフ値は,対照群9.4±5.4μg/mLと比較して負荷投与群15.8±6.8μg/mLと有意な増加を認め(p<0.05),トラフ値10μg/mL以下の症例が対照群62%から負荷投与群29%と減少傾向を示した。治療効果は有意差を認めなかったが,投与日数では,負荷投与群で有意な短縮を認めた(p<0.05)。結論:VCM負荷投与は,早期に血中濃度を上昇させ,治療効果に寄与する可能性が示唆された。
著者
座間味 義人 相良 英憲 萱野 由佳 小山 敏広 白石 奈緒子 江角 悟 鵣川 豊世武 千堂 年昭 氏家 良人 名倉 弘哲
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.461-465, 2016-06-30 (Released:2016-06-30)
参考文献数
9

エダラボンを用いた治療は患者の神経学的予後を改善する一方,急性腎障害発現のリスクがあると報告されている。本研究はエダラボン投与による急性腎障害発現を予防するために,エダラボン投与時の患者背景から危険因子を解析することを目的とした。岡山大学病院においてエダラボンが投与された患者を対象に,患者基本情報およびエダラボン投与情報,血液検査結果を電子カルテより遡及的に調査した。調査データから単変量解析を実施し,抽出した因子を用いて二項ロジスティック回帰分析を行った結果,感染症の併発が,エダラボンによる急性腎障害発現の有意な危険因子(予測因子)であることが示唆された。したがって,感染症の所見がある患者にエダラボンを投与する際は,急性腎障害発現に留意する必要がある。
著者
菊池 憲和 今井 徹 中馬 真幸 鏑木 盛雄 吉田 善一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.46-51, 2016-02-29 (Released:2016-02-29)
参考文献数
7

目的:救急認定薬剤師の現状と今後の課題を把握するために,救急認定薬剤師の業務実態と展望を調査した。方法:2014年4月1日時点で日本臨床救急医学会により認定を受けた救急認定薬剤師に択一選択および自由記述の調査用紙を郵送した。結果:調査用紙の回収率は75%,所属施設の病床数は平均649床,救急・集中治療業務への従事率は77%であった。現在の業務内容として,処方提案,注射薬の監査,麻薬等の管理,投与速度の算出,治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring; TDM),持参薬の確認については80%以上が行っており,救急認定薬剤師が精通している領域は,救急医療が最も多かった。今後実施したいと考えている業務は初療が60%,今後の展望として,業務のガイドライン作成が73%と最も多かった。考察:救急認定薬剤師が大小さまざまな施設で救急・集中治療に従事しており,今後は初療に関与してゆくことが課題であり,早急に業務ガイドラインの作成を行う必要があると考える。
著者
鎗野 真吾 田口 志麻 西本 幸夫 中川 智晴
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.60-62, 2015-02-28 (Released:2015-02-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1 or 0

アナフィラキシー患者の一部は,アドレナリン自己注射製剤(エピペン®)(以下,エピペン)を所持している。しかし,エピペンの使用状況は明らかでない。今回,救急隊員と母親の連携でエピペンを使用した小児症例を経験した。症例:13歳男性。外出先で菓子摂食後,呼吸困難と紅斑が出現し,帰宅後に母親が救急要請した。救急隊到着前に母親がエピペンを注射しようとしたが,患児は注射に対する恐怖があり,母親では実施できなかった。救急隊到着時,患児は意識清明で自力歩行可能であったが,呼吸困難を訴え,喘鳴と全身紅斑を認めた。救急車内収容後,救急隊員が母親とともに患児に説明し,同意を得て母親がエピペンを注射し,救急搬送した。病院到着前に症状は軽快した。本症例は,患児がエピペン注射を拒んだものの,救急隊員と母親との連携により注射を実施でき,奏功した例である。
著者
木本 真司 河原 史明 安齊 泰裕 塩川 秀樹 鈴木 涼子 小室 幹男 市橋 淳 西郷 竹次 下山田 博久
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.563-571, 2017-08-31 (Released:2017-08-31)
参考文献数
10

目的:とくに救急医療において,地域で形式を統一したお薬手帳による薬物医療情報の共有化が必要であると考える。方法:お薬手帳に関するアンケート調査,病院薬剤師と保険薬局薬剤師が協同した協議会の発足,会津地方で統一した『會津お薬手帳』の構成検討を行った。結果:保険薬局対象のお薬手帳に関するアンケート調査では,お薬手帳のデメリットとして,「持参しない」が90.2%,「医療機関ごとに複数所持している」が85.7%であった。作成した『會津お薬手帳』は,情報共有の同意や病名等を記載する「サマリーページ」,残薬確認,医療スタッフからのメッセージ等を記載する「アセスメントページ」,過去の処方内容や変更が一目でわかる「薬歴ページ」で構成された。考察:救急医療において病名や薬剤服用歴,処方意図を把握することは重要であると考えられ,地域統一型の『會津お薬手帳』を用いての薬物医療情報の共有化が可能となることが示唆された。
著者
金子 唯 池松 英治 池田 光隆 笠岡 俊志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.716-719, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
11

背景:院外心肺停止に対する,情報指令員による心肺蘇生(CPR)の口頭指導は蘇生ガイドラインで推奨されるが,その神経学的予後の改善効果は明らかではない。今回,熊本市消防局の心肺停止活動記録を用いて,口頭指導の予後改善効果を検討した。方法:2013年1月から2014年12月における熊本市消防局活動記録を後方視的に検討した。口頭指導あり・なしの2群に分類し,傾向スコア解析を用いて神経学的予後を比較検討した。また2群間のバイスタンダーCPRおよびAED使用率について比較検討した。結果:傾向スコア解析による口頭指導あり群(n=701)となし群(n=290)の神経学的予後(CPC1-2)比較で,口頭指導あり群は有意に予後良好であった(オッズ比2.338(1.161-4.711),P=0.0176)。口頭指導あり群は,有意にバイスタンダーCPR・AED使用率が高かった。結論:口頭指導の神経学的予後改善効果が示唆された。
著者
山口 陽子 田中 博之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-28, 2016-02-29 (Released:2016-02-29)
参考文献数
9

目的:現場で意識レベルがJapan Coma Scale(JCS)=1と判定された症例について調査する。方法:2009年8月1日からの4年間に救急車で当院へ搬送され,現場での意識レベルが記録されていた4,626例を対象とした。現場の意識レベルがJCS=0,JCS=1,JCS≧2の3群に分け,比較した。結果:JCS=1の原因病態は失神,てんかん,過換気症候群,急性アルコール中毒,頭部外傷,脳血管障害,循環血液量減少などが多く,意識障害に近い病態分布を示した。結論:最も軽症の意識障害を示すJCS=1という病態は確かに存在し,かつJCSを用いてしか判断できない。しかし,JCS=1の頭部外傷症例はJCS=0の8倍強,脳血管障害は約3倍と頻度が高い。救急救命士らはこの事実を認識し,より慎重に意識レベルを判定するとともに,搬送先選定にも役立てるべきであると考える。JCS=1を意識障害として認識するなら,JCSという評価方法は,より軽症の意識障害を拾い上げるという観点に限れば,Glasgow Coma Scaleより優れていると考えられる。
著者
加藤 隆寛 田中 聡 渡邉 暁洋 織田 順 浅香 えみ子 有賀 徹 畝井 浩子 鏑木 盛雄 菊池 憲和 桑原 健 篠原 高雄 峯村 純子 眞野 成康 西澤 健司 定光 大海
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.725-734, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
18

目的:救急医療における薬剤師のおかれた状況や不足するスキルは不明であり,これらを把握することを目的にアンケートを実施した。方法:日本臨床救急医学会の薬剤師会員を対象に,救急医療・集中治療への従事,現在および今後実施したい業務,実施希望のトレーニングコースについて調査した。結果:195名より回答を得た。救急医療への従事は23.1%,集中治療が68.2%であった。救急医療での業務は主に薬品管理で(77.8%),患者対応はおもに依頼された時のみ(64.4%)行われていた。トレーニングコースは中毒,循環器系が求められていた。集中治療では抗菌薬,循環器系薬の介入が多かったが,フィジカルアセスメントの実施率は低かった。結論:救急医療に従事する薬剤師は少ない。全患者へ対応できる体制の整備,中毒,循環器系に関するトレーニングが有効と考えられた。集中治療ではフィジカルアセスメントの活用が次の課題になると考えられた。
著者
則末 泰博 藤谷 茂樹
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.735-737, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
6

80代の遺伝性出血性毛細血管拡張症および肺動静脈奇形の既往のある女性。呼吸困難感にて来院し,高濃度酸素投与で反応しない低酸素血症を呈していた。気管挿管および陽圧換気開始直後に著しい低酸素血症の増悪を呈し,気道内圧を低下させることにより低酸素血症の改善が認められた。これは,陽圧換気による肺血管床の伸展から肺毛細血管の内径が減少することにより肺血管抵抗が増加し,相対的に肺血管抵抗の低い動静脈奇形に血流が集中し,右-左シャントが増加したためと考えられる。緊急の肺動静脈奇形塞栓術により,低酸素血症は改善し,無事退院した。解剖学的右-左シャントが存在する患者に対し,陽圧換気が酸素化を悪化させる可能性を考慮する重要性を認識させられる症例であった。
著者
瀧 健治 有吉 孝一 堺 淳 石川 浩史 中嶋 一寿 遠藤 容子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.753-760, 2014-12-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
13

マムシ咬傷は一般に広く知られているが,全国での発生件数やその治療法は今なお不明確である。目的:本邦のマムシ咬傷の治療法を含む現況を検討する。方法:全国の二次・三次救急病院9,433施設に調査票を郵送し,2007年4月から10月までのマムシ咬傷症例について,発生状況,治療内容,転帰などを調査した。回答率47.2% 975症例のうち,詳細な回答が得られた178症例(18.1%)を分析対象とした。結果・考察:受傷時に応急処置をして,できるだけ早く受診することがすすめられた。治療法は施設によってさまざまであるが,セファランチン®と抗マムシ血清の投与の有無で咬傷による腫脹,腫脹のピークに至る日数,入院日数に差はなかった。しかし,受傷時の安静の必要性はなく,むしろ応急処置や初期治療の必要性が明らかとなった。結語:全国調査でマムシ咬傷の治療法に再考が必要と示唆された。
著者
山口 陽子 田中 博之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.708-714, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
18

目的:過換気症候群(HVS)と診断された症例を後方視的に検討した。方法:2009年4月からの3年間に当院へ救急車で搬送されたHVS 653例の特徴を検討した。結果:当院へのHVS救急車搬送は,全搬送数に占めるHVSの比率が高く,若年者・女性・昼間発症例が多く,複数回搬送が少なく,精神疾患の既往が多く,鎮静薬の投与比率が低い,などの特徴があげられた。これらの特徴は,当院の立地が大きく影響していると考えられた。結論:HVSは「過換気と呼吸性アルカローシス(RA)に関連する症状」と「症状の急速な改善」だけで診断することが可能と考えられた。ただし,症状の速やかな改善がない場合は必ず,可及的に過換気を生じる器質的疾患を除外する,あるいは血液ガス分析でRAを確認する必要があると考える。
著者
山代 栄士 佐藤 史織 河村 聡志 内藤 英二 森 一生
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.591-594, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
6

スルピリドおよびオメプラゾール投与中に心室頻拍および心室細動を認めた80代女性の症例を経験した。第1病日昼頃,顔面蒼白,呼吸停止状態で発見された。意識消失を繰り返すため,救急搬送となった。血液検査,心エコー,心臓カテーテル検査を施行したが原因不明であった。心電図分析と持参薬鑑別の結果,スルピリドおよびオメプラゾールによるQT延長症候群が疑われ中止とした。中止後,第2病日にはQTc時間が短縮し,それに伴い心室頻拍がコントロール可能となった。他の要因は認められなかったことも併せ考え,スルピリドまたはオメプラゾール関与の心室頻拍および心室細動であったと考えられた。