著者
北村 淳 宮部 浩道 植西 憲達 加納 秀記 平川 昭彦 原 克子 小宮山 豊 山中 克郎 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.711-715, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
10

致死量の眠気予防薬を服用した急性カフェイン中毒の2 例を経験した。症例1:20代の男性。市販の眠気予防薬を大量内服(無水カフェイン計8g)した。入院後,鎮静薬投与下においてもカフェインの作用による興奮が強く,入院2日目まで痙攣を認めた。第20病日に退院となった。症例2:30代の男性。市販の眠気予防薬を大量内服(無水カフェイン計14g)した。入院後ただちに,血液吸着および血液透析を施行した。人工呼吸管理中に興奮や痙攣などを認めず,第11病日に退院となった。両症例のカフェインおよびカフェイン代謝産物の血中濃度を経時的に測定したところ,血液吸着および血液透析後に明らかな減少を認めた。臨床所見も考慮すると,血液浄化法の早期導入がカフェイン中毒に奏功したと考えられた。致死量を内服した急性カフェイン中毒には,血液吸着に血液透析を併用した迅速な血液浄化法も有効な治療手段の一つであると考えられた。
著者
田島 典夫 高橋 博之 畑中 美穂 青木 瑠里 井上 保介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.656-665, 2013-10-31 (Released:2013-11-25)
参考文献数
12

はじめに:バイスタンダーによるBLS は,実施者に相当な精神的負担がかかると想定されるが,これに関する研究自体が少なく対策も進んでいない。そこで,バイスタンダーのストレス反応を明らかにし,心のケアに関する対策を検討することを目的として調査を行った。対象と方法:2008年8月から2011年10月までの間にバイスタンダーによるBLSが実施されて社会復帰した事案のうち,バイスタンダーの連絡先を把握している事案を抽出し,当該事案の救助に携わった者を対象に面接調査を実施した。結果:多くのバイスタンダーがさまざまなストレス反応を経験していた。また,その体験を他者に話して,自分の気持ちを理解してもらいたいと考える者が多かった。結論:BLS教育において,BLS実施によるストレスとその対処法に関する教育を考慮する必要がある。さらに対策の一環として,相談を受けるシステムを整備することが有用であり,急務であると考えられる。
著者
髙井 美智子 上條 吉人 井出 文子
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.22-29, 2015-02-28 (Released:2015-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 or 0

救急医療の現場には,自殺企図や故意の自傷により受傷した患者が頻繁に搬送され,その多くが急性薬物中毒によるものであり,特に向精神薬の過量服薬が大部分を占めている。本研究では,北里大学病院救命救急センターに搬送された急性薬物中毒患者81名(男性:18名,女性:63名)を対象に質問紙調査を実施し,向精神薬の過量服薬の実態および関連する心理社会的要因について検討を行った。80名(98.8%)が何らかの精神障害に罹患していた。自殺念慮の有無における過量服薬した向精神薬の量に違いが認められなかったが,数時間以上前から過量服薬を考えていた患者は,衝動的に過量服薬した患者に比べて,摂取する量が有意に多かった。患者の心理社会的背景として,無職で家族・恋人・友人といった身近な人間とのトラブルを契機に衝動的に過量服薬する傾向が認められた。今後,精神障害の治療に加え心理社会的介入の必要性が示唆された。
著者
後長 孝佳 服部 友紀 安藤 雅規 波柴 尉充 富野 敦稔 宮部 浩道 加納 秀記 津田 雅庸 平川 昭彦 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.546-550, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
10

近年流通している危険ドラッグの主な成分は,合成カンナビノイドと合成カチノン系化合物である。今回,合成カチノン系化合物を含有する「Sex Bomber」を繰り返し飲用し,1カ月間に2度,同様の重篤な症状を呈した急性中毒例を経験した。症例は30歳代男性。3週間前から「Sex Bomber」を飲用していた。興奮・異常行動を認めるようになり,救急搬送された。来院時,興奮・不穏・頻脈・発汗の他,乳酸アシドーシス,横紋筋融解,肝障害,急性腎障害を認め,多臓器障害の状態であった。退院後も「Sex Bomber」の飲用を続けており,1カ月後,再び前回と同様に多臓器障害の状態で搬送された。2回とも経過中にDICに陥ったが集中治療管理により,約1週間で退院となった。合成カチノン系化合物は,組織移行性が高く作用が強力であるため,発症は急速かつ激烈である。急性中毒症例では多臓器不全をきたし死亡する例も散見されており,これら化合物に対する知識に基づいた的確な管理が必要である。
著者
城川 雅光 笠井 あすか
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.461-467, 2014-06-30 (Released:2015-01-23)
参考文献数
9

2004年度から2012年度の小笠原諸島の急患搬送記録を調査し,現状と課題を検討した。搬送例は合計266例であった。搬送患者の特徴は,外傷,脳血管障害,虫垂炎など手術やICU管理を要する症例が多かった。搬送時間は,全島平均で9時間34分と長時間を要する。一方,空港のある硫黄島からの患者搬送は,地理的に遠いにも関わらず,父島と母島の平均搬送時間と比較して45分程度短い。また搬送要請の過程で,結核患者の搬送が問題となっていた。空港建設が進まない現状で搬送時間短縮に有効な手段の一つとして,航続距離,巡航速度,着陸場所の条件を満たすティルトローター機の就航が考えられる。感染症患者搬送については,病原体や利用する航空機を問わず安全性を確保する上で,簡易アイソレーターの搭載が有効であろうと考える。しかし航空機搭載基準を満たしている製品は,国内で取扱い中止となっており,既存の製品で運用試験を行うことが課題である。
著者
中澤 真弓 中村 秀明 鈴木 宏昌
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.17-22, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
9

はじめに:救急車の不適正利用が社会問題となっている。目的:一般市民が,救急車を呼ぶべき救急疾患を示唆する状況に遭遇した場合,救急車を呼ぶ判断をするのかを明らかにする。方法:2016年5月,全国の一般市民5,000人を対象にインターネットによる質問調査を実施した。結果:平均年齢45.2(± 14.6)歳。「救急車を呼んだことがある」38.5%,「自分または身近な人が救急車で運ばれたことがある」62.6%,「救急車を呼ぶべき症状について見聞きしたことがある」46.9%。救急車を呼ぶべき状況では,15症例中9項目で「どちらともいえない」と回答した割合が15%を超えた。考察と結論:一般市民は救急車を呼ぶべき救急疾患を示唆する状況にある傷病者に遭遇した場合でも,救急車を呼ぶかどうか判断できない場合もある。その際,救急車を呼ぶとの判断ができるように,緊急度を判定するツール等のさらなる周知が必要である。
著者
植田 広樹 田中 秀治 田中 翔大 匂坂 量 田久 浩志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.46-51, 2018-02-28 (Released:2018-02-28)
参考文献数
15

背景:近年,早期に投与されたアドレナリンが脳機能予後を改善することが報告されている。しかし,119番通報から傷病者への接触までの時間(以下,Response time)と,傷病者へ接触してからアドレナリンを投与するまでの時間(以下,Adrenaline time)を関連付けた報告はない。目的:本研究の目的は,病院外心停止症例において救急救命士による早期アドレナリン投与がResponse timeに関係なく,脳機能予後の改善に影響を及ぼすか検討すること。方法:全国ウツタインデータ(2011〜2014年)を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。対象は年齢8歳から110歳までの目撃ありの心停止(心静止,VF,無脈性VT,PEA)でアドレナリンの適応であった症例のうち,119番通報から救急救命士が傷病者への接触まで16分以内,かつ傷病者へ接触してから22分以内(99%タイル以内)にアドレナリンを投与した13,326症例を抽出した。対象をResponse timeが8分以内の群(n=6,956)と8分以上16分以内の群(n=6,370)の2群に分類し,さらにそれぞれの群をAdrenaline timeが10 分以内の群と,10分以上の群の2群に階層化した。Primary outcomeを1カ月後脳機能予後良好率,Secondary outcomeを心拍再開率としてロジスティック解析を実施した。結果:Response timeの2群に対して,Adrenaline time の早さにより1カ月後脳機能予後良好率に影響を与えるかオッズ比で比較してみたところ,Response timeが8分以内の群は2.12(1.54〜2.92)であった。8分以上16分以内の群は2.66(1.97〜3.59)であった。一方,心拍再開率はResponse time が8分以内の群で2.00(1.79〜2.25),8分以上16分以内の群で2.00(1.79〜2.25)であった。Response timeが8分以内の群も8分以上16分以内の群も,Adrenaline timeが10分以内の群の方が10分以上の群と比較し1カ月後脳機能予後良好率,心拍再開率ともに有意に高かった。考察:病院外心停止症例においてアドレナリンは,Response timeが8分以上かかったとしても,16分以内であれば,救急救命士が傷病者へ接触後できる限り早期に投与すれば1カ月後脳機能予後良好率を改善し得ると考える。結語:今後,救急救命士は傷病者への接触から10分以内の早期にアドレナリンを投与するための工夫を行うとともに,地域のプロトコールを見直すなど,早期にアドレナリンを投与できるための努力が必要である。
著者
山口 陽子 田中 博之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.708-714, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
18

目的:過換気症候群(HVS)と診断された症例を後方視的に検討した。方法:2009年4月からの3年間に当院へ救急車で搬送されたHVS 653例の特徴を検討した。結果:当院へのHVS救急車搬送は,全搬送数に占めるHVSの比率が高く,若年者・女性・昼間発症例が多く,複数回搬送が少なく,精神疾患の既往が多く,鎮静薬の投与比率が低い,などの特徴があげられた。これらの特徴は,当院の立地が大きく影響していると考えられた。結論:HVSは「過換気と呼吸性アルカローシス(RA)に関連する症状」と「症状の急速な改善」だけで診断することが可能と考えられた。ただし,症状の速やかな改善がない場合は必ず,可及的に過換気を生じる器質的疾患を除外する,あるいは血液ガス分析でRAを確認する必要があると考える。
著者
齋藤 靖弘 山下 友也 武田 清孝 増井 伸高 松田 知倫
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.39-46, 2017-02-28 (Released:2017-02-28)
参考文献数
15

救急隊員に急性薬物中毒の知識をアンケート調査し,薬剤に関する知識不足から搬送・病院選択に苦慮していることが明らかとなった。そこで,重症急性薬物中毒に陥りやすい薬剤の中で,致死性不整脈へ移行しやすく,PCPS等の補助循環可能な高次医療機関搬送が必要となる三環系抗うつ薬に関して,薬学的知識を補う簡単な手製のリーフレットを薬剤師が中心となって作成し,4消防本部の救急隊員へ配布・説明した。その後,調査票を配り,①薬剤リストから三環系抗うつ薬を選択,②三環系抗うつ薬過量内服患者の観察強化項目を選択する,という2つの項目の正答率ならびに回答率と自由記載コメントから,リーフレットによる教育効果を評価した。リーフレットを作成して救急隊員へ薬学的知識を支援することは,教育効果以外に搬送先選定などの救急対応を改善する効果も期待でき,プレホスピタルにおける薬学的支援の重要性を感じるものだった。
著者
中薗 健一 高野 尊行 根本 真人 長谷川 伸之
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.761-765, 2014-12-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
18

集中治療室(ICU)では,時間経過とともに刻々と変化する病態に合わせた薬物治療計画が必要である。そのため,薬剤師による迅速な薬学的介入は重要であると考えられる。今回,ICU専従薬剤師による全身管理への薬学的関与の影響について検討した。方法:那須赤十字病院ICUへ入室した患者を対象とした。2010年1月から12月の270名を専従前群,2013年1月の49名を専従後群とした。薬剤管理指導記録から薬学的介入の内容,薬物治療変更の有無について比較検討した。結果:薬剤管理指導実施率は専従前64.1%から,専従後91.8%へ有意に増加した。薬学的介入による薬物治療変更は,専従前51.3%,専従後73.2%へ有意な増加を認めた。考察:ICUへの薬剤師専従化により,薬学的介入件数,薬物治療変更率はともに増加した。これより,患者の病態変化に合わせた迅速な薬学的介入を行うことができた。
著者
小野 和幸 大河原 治平 阪本 敏久
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.64-68, 2017-02-28 (Released:2017-02-28)
参考文献数
12

現場での心肺蘇生拒否(do not attempt resuscitation,以下DNARと略す)の意向をもつ家族等に対応するための「救急隊員が行う応急処置に関する要望書」(以下,要望書と略す)について,その使用状況を調査した。平成18年から24年の間に現場でDNARの要望があった対象例を検討した。調査期間中のDNAR対象は12件あり,11件で要望書が提出された。年齢は72歳から100歳まで,性別は男7名,女5名,DNAR意思確認書類を事前に提出されたのは1名,心肺蘇生実施4名,搬送実施9名であった。要望書はDNARの搬送のほか,特定行為を拒否し一次救命処置のみでの搬送や不搬送とすべき傷病者で活用されていた。傷病者の医療拒否権について合意形成がない中でも現場でDNARに遭遇することがあり,要望書は現状の解決策の1つと思われる。解決策として救急業務実施基準等の改定が望まれる。
著者
北小屋 裕 近藤 久禎 横堀 將司 中田 敬司
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.702-706, 2013-10-31 (Released:2013-11-25)
参考文献数
9

老人保健施設で発生した心肺停止症例に対して,臨場した医師の具体的指示を受け,救急救命士が特定行為を実施した事案を経験した。この事案に対し,救急現場に医師が臨場している場合には医師が救命行為を実施するべきであり,たとえその医師から特定行為の具体的指示を受けたとしても救急救命士は特定行為を実施するべきではないとの指摘を地域メディカルコントロール協議会より受けた。救急救命士が特定行為を行いうる指示要件や場所的要件,医師が臨場した場合の救急救命士の特定行為について,救急救命士法の解釈を中心に考察した結果,医師臨場下で特定行為を実施することは法的には問題ないが,医師の身分確認やメディカルコントロール協議会との整合性などいろいろな問題点をクリアする必要性が明らかとなった。
著者
木本 真司 河原 史明 安齊 泰裕 塩川 秀樹 鈴木 涼子 小室 幹男 市橋 淳 西郷 竹次 下山田 博久
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.563-571, 2017-08-31 (Released:2017-08-31)
参考文献数
10

目的:とくに救急医療において,地域で形式を統一したお薬手帳による薬物医療情報の共有化が必要であると考える。方法:お薬手帳に関するアンケート調査,病院薬剤師と保険薬局薬剤師が協同した協議会の発足,会津地方で統一した『會津お薬手帳』の構成検討を行った。結果:保険薬局対象のお薬手帳に関するアンケート調査では,お薬手帳のデメリットとして,「持参しない」が90.2%,「医療機関ごとに複数所持している」が85.7%であった。作成した『會津お薬手帳』は,情報共有の同意や病名等を記載する「サマリーページ」,残薬確認,医療スタッフからのメッセージ等を記載する「アセスメントページ」,過去の処方内容や変更が一目でわかる「薬歴ページ」で構成された。考察:救急医療において病名や薬剤服用歴,処方意図を把握することは重要であると考えられ,地域統一型の『會津お薬手帳』を用いての薬物医療情報の共有化が可能となることが示唆された。
著者
的井 愛紗 矢田 憲孝 廣田 哲也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.748-752, 2017-12-31 (Released:2017-12-31)
参考文献数
10

症例:78歳女性。現病歴:C型肝硬変・肝細胞癌の既往があり,5年前よりグリチルリチン製剤80mg/日を週4回静注されていた。路上で倒れているところを発見され救急要請となり,救急隊到着時の心電図所見は心室細動であった。除細動とアドレナリンの投与を行い,心拍再開後に当院へ搬送された。来院後経過:来院時,血清K 値は1.6mEq/lと低値であり,心電図ではQTc延長(631ms)を認め,低K 血症により心室細動をきたしたものと考えられた。入院後,低K 血症にもかかわらず尿中K 排泄量は多く,第6病日のレニン活性・アルドステロン値はともに低く,偽性アルドステロン症と診断した。グリチルリチン製剤の中止とカリウム補充により血清K値は正常化し,その経過中に致死性不整脈を併発しなかったが,第18病日に低酸素脳症で死亡した。考察:静注グリチルリチン製剤による偽性アルドステロン症から心室細動をきたした稀な1例を経験した。
著者
田坂 健 東恩納 司 三上 奈緒子 日野 隼人 大川 恭昌 武本 あかね 河崎 陽一 村川 公央 北村 佳久 千堂 年昭
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.638-643, 2017-10-31 (Released:2017-10-31)
参考文献数
14

目的:薬剤師が集中治療室に常駐し,積極的に塩酸バンコマイシン(以下,VCM)の治療薬物モニタリング(以下,TDM)介入を行うことによる効果を明らかにする。方法:薬剤師が常駐する前後で2群に分け,レトロスペクティブに調査を行った。結果:薬剤師の常駐によりVCM血中濃度測定実施率は86.2%から96.5%,シミュレーション解析実施率は24.1%から95.4%へ有意な増加を認めた。血中濃度分布は,トラフ値10μg/mL 未満の割合が24.1%から15.1%へ有意に減少した。一方でトラフ値20 〜25μg/mLの割合が3.7%から15.7%へ有意に増加していた。また,腎障害の発生率は6.5%から2.1%へ減少傾向を示した。結論:ICUにおいて専任薬剤師がVCMのTDM介入を行うことで,TDM実施率の向上とトラフ値が適正化され,VCM適正使用に貢献できることが示唆された。
著者
山田 浩二郎 鈴木 明人 山本 直之 須賀 啓臣 天野 尽 茅野 俊幸 杉本 一郎 速水 広樹 杉木 大輔 池上 敬一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.629-637, 2015-10-31 (Released:2015-10-31)
参考文献数
12

目的:平成25年9月2日,埼玉県東部地域に発生した竜巻への対応時に行われた県下初の消防相互応援を受けた警防本部活動を検証し,課題を抽出して,今後の実災害および訓練における進むべき方向を探る。対象と方法:地域MC協議会の承認を受け,各消防組織の活動報告書の収集・関係者へ聴取等を行い,MIMMSの考え方に基づき整理し,まとめる。結果と考察:初期対応;発災は119番通報の集中により認識され,その6分後に警防本部の立ち上げが開始された。一方,発災認識10分後には救急車両は全て出動していた。車両の不足を主因とし,37分後ブロック応援,101分後県下応援要請が行われた。情報収集;119番回線,一般加入電話は応需状態が約90分間連続し,また通報の整理に難渋した。指揮;当初被災地域の把握は,それが細長く形成されたことおよび119番通報応需時出動隊との交信が困難となり遅滞した。その後人員・資器材の充足および被災概要の把握が進み,機能した。指揮支援は発災地域の消防が起案し円滑に実施された。中規模災害時の受援消防本部を想定した訓練が不足していたことなどの課題が明らかになり,今後の施策に生かせるものと考える。
著者
近藤 匡慶 菅谷 量俊 長野 槙彦 磐井 佑輔 金子 純也 諸江 雄太 工藤 小織 久野 将宗 畝本 恭子 村田 和也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.571-577, 2016-08-31 (Released:2016-08-31)
参考文献数
18

目的:バンコマイシン(以下,VCM)負荷投与は,抗菌薬TDMガイドラインに記載されているが,有用性を示す報告は少なく,今回,救命救急センターでの有用性を検討した。方法:トラフ値,治療効果,投与日数等を負荷投与群,通常投与群(以下,対照群)で比較検討した。負荷投与は初日1〜2g投与し,維持投与はトラフ値10〜20μg/mLを目標に薬剤師が投与設計した。結果:負荷投与群7例,対照群21例を認め,トラフ値は,対照群9.4±5.4μg/mLと比較して負荷投与群15.8±6.8μg/mLと有意な増加を認め(p<0.05),トラフ値10μg/mL以下の症例が対照群62%から負荷投与群29%と減少傾向を示した。治療効果は有意差を認めなかったが,投与日数では,負荷投与群で有意な短縮を認めた(p<0.05)。結論:VCM負荷投与は,早期に血中濃度を上昇させ,治療効果に寄与する可能性が示唆された。
著者
座間味 義人 相良 英憲 萱野 由佳 小山 敏広 白石 奈緒子 江角 悟 鵣川 豊世武 千堂 年昭 氏家 良人 名倉 弘哲
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.461-465, 2016-06-30 (Released:2016-06-30)
参考文献数
9

エダラボンを用いた治療は患者の神経学的予後を改善する一方,急性腎障害発現のリスクがあると報告されている。本研究はエダラボン投与による急性腎障害発現を予防するために,エダラボン投与時の患者背景から危険因子を解析することを目的とした。岡山大学病院においてエダラボンが投与された患者を対象に,患者基本情報およびエダラボン投与情報,血液検査結果を電子カルテより遡及的に調査した。調査データから単変量解析を実施し,抽出した因子を用いて二項ロジスティック回帰分析を行った結果,感染症の併発が,エダラボンによる急性腎障害発現の有意な危険因子(予測因子)であることが示唆された。したがって,感染症の所見がある患者にエダラボンを投与する際は,急性腎障害発現に留意する必要がある。
著者
菊池 憲和 今井 徹 中馬 真幸 鏑木 盛雄 吉田 善一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.46-51, 2016-02-29 (Released:2016-02-29)
参考文献数
7

目的:救急認定薬剤師の現状と今後の課題を把握するために,救急認定薬剤師の業務実態と展望を調査した。方法:2014年4月1日時点で日本臨床救急医学会により認定を受けた救急認定薬剤師に択一選択および自由記述の調査用紙を郵送した。結果:調査用紙の回収率は75%,所属施設の病床数は平均649床,救急・集中治療業務への従事率は77%であった。現在の業務内容として,処方提案,注射薬の監査,麻薬等の管理,投与速度の算出,治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring; TDM),持参薬の確認については80%以上が行っており,救急認定薬剤師が精通している領域は,救急医療が最も多かった。今後実施したいと考えている業務は初療が60%,今後の展望として,業務のガイドライン作成が73%と最も多かった。考察:救急認定薬剤師が大小さまざまな施設で救急・集中治療に従事しており,今後は初療に関与してゆくことが課題であり,早急に業務ガイドラインの作成を行う必要があると考える。
著者
鎗野 真吾 田口 志麻 西本 幸夫 中川 智晴
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.60-62, 2015-02-28 (Released:2015-02-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1 or 0

アナフィラキシー患者の一部は,アドレナリン自己注射製剤(エピペン®)(以下,エピペン)を所持している。しかし,エピペンの使用状況は明らかでない。今回,救急隊員と母親の連携でエピペンを使用した小児症例を経験した。症例:13歳男性。外出先で菓子摂食後,呼吸困難と紅斑が出現し,帰宅後に母親が救急要請した。救急隊到着前に母親がエピペンを注射しようとしたが,患児は注射に対する恐怖があり,母親では実施できなかった。救急隊到着時,患児は意識清明で自力歩行可能であったが,呼吸困難を訴え,喘鳴と全身紅斑を認めた。救急車内収容後,救急隊員が母親とともに患児に説明し,同意を得て母親がエピペンを注射し,救急搬送した。病院到着前に症状は軽快した。本症例は,患児がエピペン注射を拒んだものの,救急隊員と母親との連携により注射を実施でき,奏功した例である。