著者
海老島 宏典 吉田 健史 内山 昭則
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.243-248, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)
参考文献数
29

人工呼吸中に自発呼吸を温存することは,背側肺領域優位の換気を促し,低い気道内圧(プラトー圧)でも呼気終末肺容量が比較的保たれ,酸素感も改善することから,最も侵襲性の低い肺リクルートメント療法であると考えられている。しかし,急性呼吸窮迫症候群の重症例など呼吸努力の特に強い症例では,肺保護換気戦略に則ってプラトー圧を制限したとしても経肺圧が増加し,人工呼吸器関連肺傷害の危険因子となり得ることが多数報告されている。また,そのような症例に対し,肺保護換気戦略に従って1回換気量を制限したとしても,pendelluft現象により肺局所の過伸展から肺損傷を引き起こす可能性がある。呼吸努力を最小限に抑えた自発呼吸の温存または,筋弛緩によるfull supportは症例ごとの呼吸状態を慎重に見極めることで,一連の管理方法となり得ると考える。
著者
松本 充弘 平尾 収 木岡 秀隆 大橋 祥文 大田 典之 後藤 幸子 内山 昭則 藤野 裕士
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.185-189, 2010-04-01 (Released:2010-10-30)
参考文献数
11

患者は18歳女性。神経性食思不振症(anorexia nervosa, AN)のため,当院精神科に入院した。入院後,低血糖発作による意識レベルの低下を認めた。ブドウ糖液投与にて意識は改善したが,心臓超音波検査(ultrasonic echocardiogram, UCG)にてたこつぼ型心筋症の像を認めた。また血液検査にて血清リン値が0.9 mg·dl−1に低下していたため,refeeding syndromeと診断され,ICU入室となった。入室後,血清リン値をはじめ適宜電解質の補正をしながら徐々に投与カロリーの増加を図った。電解質,体重の改善を認め,入室後16日目にICU退室となった。長期間低栄養状態にある患者に対して栄養投与をする場合,バイタルサインや水分バランス,リンを含めた電解質異常を注意深く観察しながら治療すること,また投与カロリーの増加を緩徐に行うことが重要である。