- 著者
-
内藤 楠登
プラン ミッシェル
- 出版者
- 日本人口学会
- 雑誌
- 人口学研究 (ISSN:03868311)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, pp.13-33, 2004-11-30 (Released:2017-09-12)
あらゆる人口学的データが示すように沖縄は世界でも有数な長寿地域であるといえる。2000年における沖縄県男性の平均余命は全国平均とさほど変わらないが,沖縄県女性の平均余命は全国平均に比べ1.4歳高く86.01歳に達し,人類の平均余命の限界といわれた86歳をも上回った。2003年における高齢者が全人口に占める割合から見ても,全国平均では10万人中百歳を越える高齢者の割合は15人程度だったが,沖縄では40人以上だった。日本が世界でも有数の長寿国になり,あらゆる分野の研究者が日本人の死亡パターンの研究に携わった。疫学者や老年学者は日本人の食生活やライフスタイルに着目し,他分野の識者は公衆衛生の重要性を示唆したが,沖縄は,世界でも例外的といえる日本(本土)よりさらに例外的だと言える。本研究を通じ沖縄では既に1980年代後半より若年及び壮年層において死亡率が上昇傾向にあったことを確認した。沖縄の死亡率上昇の兆候はかなり前から見られていたが,1995年には都道府県中4位だった沖縄県男性の平均余命が2000年に26位に後退し沖縄の人々に衝撃を与えた。現時点で人手可能な生命表と死亡確率の推移から得た研究結果から,沖縄と本土の死亡確率線の比較を行ったが,ある一定の年齢から死亡確率の高低が逆転する現象が見られた。この比較結果から,沖縄には(本土に比べ)低死亡確率に特徴付けられた戦前世代と,高死亡確率の戦後世代からなる二つの死亡パターンが存在していることが判明した。本論文では本土と比較した場合の沖縄の死亡パターンの例外性の原因,主に生活パターンの変化や高齢者の戸籍の信憑性についても言及したい。