著者
内野 大介 渡辺 文治
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.117, 2012

<B>【はじめに】</B><BR> 日本における視覚障害者の職業状況は厳しい。渡辺ら(1995)は、中途視覚障害者の職業問題で、比較的可能性の高いのが復職であり、あはき以外の新しい職業・職種に就くことは困難な状況にあると報告している。<BR> 七沢更生ライトホーム(以下ライトホーム)は、視覚障害者に自立訓練(感覚・歩行・コミュニケーション・日常生活技術)を中心とした総合的なサービスを提供する施設である。退所後の進路では、あはきを希望する利用者が多い。本報告では、あはきの資格取得のために、盲学校や養成施設(国立障害者リハビリテーションセンター、以下国リハ)に進んだ利用者の状況を分析し、必要な支援の内容を明らかにしたい。<BR><BR><B>【方法】</B><BR> 対象は、1999年4月から2009年3月末までのライトホーム入所利用者172名(男性122名、女性50名)である。様々な資料が集約されている各利用者のケースファイルをもとに調査した。利用者のプロフィールは、年齢、利用期間、障害等級、原因疾患、学歴、職歴、家族構成、経済基盤等である。支援状況は、学力テスト(中卒程度の教科テスト)、学習手段の検討、各訓練(歩行、点字、PC)の結果についてである。<BR><BR><B>【結果と考察】</B><BR> 盲学校や国リハに進んだ利用者は31名(男性26名、女性5名)であった。平均年齢は39.9歳(最小20、最大61)、利用期間の平均は12.4ヶ月(最小2、最大23)である。<BR> 学歴は、大卒が少なく、中卒・高卒が多い。職歴のある利用者の多くは、入所時に無職である。前職が現業職の者が多いことは、受障後に前職のキャリアを生かしにくく、新たな職業技術を身に付ける必要性を示している。これらの利用者は、訓練により新たなコミュニケーション手段と移動技術を習得しても事務職に就くことは困難である。彼らは職歴や年齢等を考慮し、あはきを選択することが多い。<BR><BR><B>【おわりに】</B><BR> あはきに対してネガティブなイメージを持つ利用者もいる。安易に「視覚障害者の職業=三療」とするのではなく、様々な選択肢を提示し、自らの意思で選んだ進路があはきとなるように支援をする必要がある。杉山和一をはじめ先人の努力の結果として現存する職業システムを有効に活用すべきである。また盲学校や国リハとの連携も欠かせない。