著者
冨原 均
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.522-532, 1993

積極的降圧療法に基づき, 伊豆長岡順天堂病院で治療された解離性大動脈瘤75例の臨床像について検討を行い, 次の結果を得た. 年齢分布は臨床上, 中年者群と高齢者群の2峰性を示した. 73% (55例) に高血圧症合併を認め, 身体を捻るなどの動作が発症の誘因となった例を13例 (17%) 経験した. このことは臨床診断上の手掛かりとして重要と考えられた. 経時死亡率は, 発症48時間以内25%・2週間以内36%, 最終的には49%と比較的良好であったが, 発病早期の死亡率が高かった. 心タンポナーデが死因の第一位であったが (19例 51%), 心タンポナーデ時に77%の高率で不整脈の出現を認めた. 剖検12例全例に房室結節ならびにその近傍に血腫が認められ, これが不整脈の原因と考えられた. 血腫の肉眼的拡がりの程度を3型に分類し, 不整脈の種類との関連を検討したが明らかな相関は認められなかった. この不整脈は大動脈起始部の瘤破裂の予兆と言うよりはむしろ心タンポナーデ発生直後の結果にすぎないと考えるのが妥当と思われた.