著者
冨田 りさ 酒井 佳永
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学心理学部紀要 (ISSN:24348295)
巻号頁・発行日
no.4, pp.169-180, 2022-03

本研究では,人がストレスフルな体験に遭遇したときに精神的健康を維持し続ける力であるレジリエンス(resilience)のうち,後天的に向上させやすいとされる獲得的レジリエンスに着目し,未来,現在,過去の自分に対する評価である時間的展望体験とソーシャル・サポートとの関連を検討することを目的として,女子大学生95名(Mean:20.7,SD:1.02)を対象に,二次元レジリエンス要因尺度(平野,2010)の下位尺度である獲得的レジリエンス尺度,時間的展望体験尺度(白井,1994),大学生用ソーシャ・ルサポート尺度(片受・大實,2014)で構成される質問紙調査を実施した。 分析方法としては獲得的レジリエンス尺度を従属変数,時間的展望体験尺度と大学生用ソーシャル・サポート尺度を独立変数とする階層的重回帰分析を行い,その結果をふまえて獲得的レジリエンス尺度に時間的展望体験尺度と大学生用ソーシャル・サポート尺度が相互に関連しながら影響を及ぼすモデルを作成し,共分散構造分析を用いて探索的に検討を行った。 その結果,階層的重回帰分析では,獲得的レジリエンス尺度の問題解決志向には未来指向性と情緒・所属的サポートが関連し,自己理解には未来指向性と情報・道具的サポートが関連し,他者心理の理解には過去受容と評価的サポートが関連していることが示された。共分散構造分析では,評価的サポートが時間的展望体験尺度の3要因とそれぞれ関連していることが示され,時間的展望体験尺度を介して獲得的レジリエンスに寄与することが示唆された。