著者
冨田 裕一郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.115-121, 1972-03-30

トリプトファン・グルコース反応液と現在常用されている抗酸化剤との酸化防止効果の比較を行なったところ, ここで明らかにされた最適条件で得られた反応液の抗酸化能はα-トコフェロールよりも強く, 合成抗酸化剤のBHA, BHTに匹敵するものであることが明らかになった.以上のように強い抗酸化性を示したトリプトファン・グルコース反応生成物ナタネ油の抗酸化剤, カロチンの安定剤および餅の揚げ物の抗酸化剤として用いた試験を行なった.そして, この反応生成物はBHA, BHTなどに匹敵する効果を示すことを明らかにした.
著者
冨田 裕一郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.105-114, 1972-03-30
被引用文献数
1

トリプトファン・グルコース反応液中のどのような成分が, 抗酸化能に関係しているかについて検討した.まず反応液を透析し, 非透析性のメラノイジンと透析性の低分子物質にわけ, 両者の抗酸化能を調べた.その結果, この反応液の抗酸化能は主としてメラノイジンにあるが, 低分子物質もある程度関与しているものと考えられた.その各々を凍結乾燥すると前者では抗酸化能の低下はみられなかったが, 後者では低下がみられ, 不安定な物質よりなることがうかがわれた.メラノイジンについてみるに, トリプトファン系のそれは, リジンおよびグリシンなどから作られたメラノイジンよりも強い抗酸化能を示し, メラノイジンの種類によって抗酸化能を異にすることがわかった.さらに, この反応液の透析される部分に存在する低分子の抗酸化性物質の検索を行なった.そしてまず, 抗酸化性物質の簡易な検出法について検討し, 試料が展開された薄層クロマトグラムにリノール酸を噴霧し, ある時間酸化させたのち, チオバルビツール酸を反応させ, 酸化が防止された部分が発色しないで白いスポットとして検出される方法, および同様にロダン鉄試薬で検出する方法を考案した.この検出法を用いて, イオン交換性樹脂(Dowex 50W(H^+))カラムで分別された分画について抗酸化性物質の検索を行なった.そして, 前記の透析液には少なくとも5つ以上の抗酸化性を示す物質が検出され, そのうちの一部はレダクトン類で, すべて極めて不安定な化合物よりなることがわかった.そしてキヌレニン, ヒドロキシキヌレニンなどのトリプトファン分解物の存在は確認出来なかった.すなわち, トリプトファン・グルコース反応液の抗酸化能は主として着色物質のメラノイジンによっており, それにレダクトン類を含む数種の不安定な反応中間物質が共助的に関与して発現しているものと考えた.
著者
冨田 裕一郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.161-170, 1971-09-25
被引用文献数
1

トリプトファン・グルコース反応系の抗酸化能発現に影響する諸条件について検討した.1.抗酸化能は反応条件によって大きく支配されることが明らかとなった.しかも, 抗酸化能は検討した全ての因子によって変化することが認められ, 反応の進行度を示す着色度と平行することが明らかとなった.2.一般にアミノ・カルボニル反応による抗酸化性の発現は, アルカリ性側で, 加熱反応温度が高い程, 加熱時間の長い程大きい.しかし, 反応するアミノ酸や糖の濃度によって極限のあることが明らかとなった.