著者
仲田崇志 冨田勝 野崎久義
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.364-369, 2010-12-20 (Released:2022-10-20)

Volvulina(新称;マユダマモ属)は主に 8または 16細胞性の群体性オオヒゲマワリ類で,中空で楕円体状の群体を形成する.本研究において,マユダマモ属の株が本邦神奈川県津久井湖より分離され,形態に基づきVolvulina compacta(新称:ヨリソイマユダマモ)と同定された.ヨリソイマユダマモはこれまでネパールからしか知られておらず,本邦では初の報告となる.葉緑体の rbcL, atpB, psaA, psaB および psbC 遺伝子を用いた複数遺伝子解析によると,ヨリソイマユダマモの日本産株はネパール産株およびV. pringsheimii のアメリカ産株と近縁で,本邦から知られていたV. steinii(新称:スタインマユダマモ)とは系統的に離れていた.日本産ヨリソイマユダマモはスタインマユダマモよりも V. pringsheimii により近縁だったが,V. pringsheimii とは細胞が頂面観で四角形であることから明確に区別された.これらの結果から,ヨリソイマユダマモに隠蔽種が含まれることが示唆された.