- 著者
-
出雲 明彦
酒井 賢一郎
田村 恭久
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床救急医学会
- 雑誌
- 日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.6, pp.763-768, 2017-12-31 (Released:2017-12-31)
- 参考文献数
- 10
アシクロビルは,帯状疱疹などのウイルス感染症の効果的な治療薬であるが,稀な副作用として脳症を併発する。症例は,86歳男性。腎機能異常の指摘はなかった。受診6日前,左顔面に帯状疱疹を認め,前医よりアシクロビル錠(400mg 8T4X)を処方された。受診3日前より食指不振となり,輸液投与するも改善せず,さらに意識レベル低下を認め当院を紹介された。意識レベルJCS:Ⅱ-20。採血検査で急性腎機能障害(BUN/Cre=77/7.93mg/dl)を認めた。アシクロビルによる脳症を考え,他の内服薬とともに中止し,輸液管理とした。第4病日にはJCS Ⅰ-3へ意識レベルは改善した。アシクロビルは透析を含む慢性腎不全の患者に投与することで脳症を生じることがある。腎排泄型であるため,ことに高齢者では,腎機能異常の指摘がなくても,脱水や他の腎排泄型薬剤との併用が急性腎不全を引き起こし,アシクロビル脳症を引き起こす可能性がある。