著者
宮谷 友香 別宮 史朗 谷 杏奈 松井 寿美佳 岩佐 武 猪野 博保 小倉 理代 日浅 芳一
出版者
徳島赤十字病院
雑誌
徳島赤十字病院医学雑誌 = Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal (ISSN:13469878)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.38-42, 2009-03-25

深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)は肺血栓塞栓症の原因の1つとして重要であり,近年急速に増加している.特に,妊娠中は凝固能亢進や増大子宮による静脈圧排のためにDVT が生じやすくなっている.今回,妊娠後期にDVT を発症し,治療に苦慮した症例を経験したので報告する.症例は22歳の初産婦.妊娠37週に左大腿腫脹と疼痛を認め,左外腸骨静脈のDVT と診断し入院.ヘパリンの持続点滴を行ったが血栓の増大を認め,肺血栓塞栓症予防目的で下大静脈一時フィルターを留置した.フィルター留置後1日目に陣痛発来し,2日目に分娩となった.フィルター留置後もさらに血栓は増大し,ウロキナーゼも効果がみられず下大静脈にも血栓が及んできたため,一時フィルターを抜去し恒久的下大静脈フィルターを留置した.分娩後はワーファリン内服を開始し,産褥13日目に退院となった.