著者
前多 隼人
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.12, no.10, pp.503-508, 2012 (Released:2015-02-14)
参考文献数
30

フコキサンチンはワカメやコンブなどの褐藻類に特徴的に含まれる,カロテノイドの一種である。近年,抗肥満,抗糖尿病,抗酸化,抗がん,血管新生抑制作用など,フコキサンチンの様々な生理機能が報告されている。これらの機能の中でも脂肪組織を介した抗肥満,抗糖尿病作用は特に注目されている。 フコキサンチンは,肥満による様々な疾患の原因となる白色脂肪組織の肥大化を抑える。その作用機構としてuncoupling protein 1(UCP1)タンパク質の,白色脂肪組織での異所性の発現誘導が考えられている。また,脂肪組織から分泌され体内の組織のインスリン抵抗性の惹起に関わるアディポサイトカインの分泌調節や,筋肉組織での糖取り込みの正常化により抗糖尿病効果を示す。近年ではフコキサンチンの体内動態とそれら代謝物による作用も明らかになりつつある。本項では特にこのようなフコキサンチンによる脂肪組織や筋肉組織を介した抗肥満作用,抗糖尿病作用の作用機構について解説する。