著者
前梶 健治
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.251-257, 1978 (Released:2008-11-21)
参考文献数
14
被引用文献数
12 16

コンニャクマンナン(KM)のゲル化機構を明らかにするため,ゲル化過程におけるレオロジカルな変化の速度論的な解析を試みた. 1. KM溶液(約1%)のゲル化過程をアミログラフで追跡し,再現性あるアミログラムを得た.このアミログラムの形状は,ゲル化過程で観察される現象とよく対応した. 2. ゲル化過程で,凝固剤添加時からゲル化の開始時までの時間を誘導期(tC)とし,これを脱アセチル化反応と仮定すれば,ゲル化の現象を合理的に説明することができた.しかし,他の測定値からはそのようなパラメーターは得られなかった.そして,1/tCを誘導反応の速度に比例する値と仮定して反応の活性化エネルギーを求めると11.6kcal/molとなった. 3. KMを鹸化し,そのときの活性化エネルギーを求めると11.8kcal/molとなり,アミログラフを使用して求めた誘導反応のそれとよく一致した. 4. 以上の結果から,アミログラフで測定されるtCの値は,脱アセチル化に要する時間で,1/tCはその反応速度定数に比例する値と考えられる.したがって, KMのゲル化における誘導反応については1/tCを用いて速度論的に解析することが可能と思われる。