著者
前田 文彦
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日光角化症は紫外線に慢性的にあたり続ける事によって誘発される皮膚病変で,日焼けをしやすい顔面,耳介,前腕手背部の皮膚に好発する。いわゆる日焼け(surbum)とは異なり慢性的な紫外線曝露で遺伝子に変異が生じ発症する。本症は表皮内癌であり、進行すると有棘細胞癌へ移行することが知られている。日光角化症患者の数は近年増数してきており,環境問題として世界的な話題となっている成層圏オゾン層の破壊による紫外線量の増加との関連が指摘されている。イミクイモッドは米国で尖圭コンジロームの治療に用いられている免疫調製剤で近年ボーエン病や悪性黒色腫に対する有効例が報告されている。我々は日光角化症患者に対し5%イミクイモッドクリームの外用を行いその有効性を臨床的に確認している。現在60症例に対して外用療法を行い臨床的に88パーセントの治癒率を認める良好な結果を得た。その症例は組織的にも腫瘍細胞の消失を確認している。腫瘍細胞の消失はKi S5の免疫染色でも確認している。また腫瘍が消失した症例では現在までの所再発を認めていない。またイミクイモッドが著効した症例で、同薬の外用前、外用中、外用後の組織を採取しそれぞれを比較検討した。結果リンパ球が誘導されアポトーシスが生じて腫瘍が攻撃されている所見が得られた。イミクイモッドはTLR-7のアゴニストといわれている。その治癒機序の一つとしてTLR-7に誘導されるアポトーシスを仮定し、それを免疫染色で証明できた。また誘導されたリンパ球はT cellであった。現在以上の所見をまとめ論文執筆中である。