著者
劉 国翰
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.77-91, 2006-04-30 (Released:2007-08-01)
参考文献数
20

自由民権運動を起こした経済的背景について、「農民的商品経済論」と「中間地帯論」の矛盾がある。本論は、明治初期の地租変動と自由民権運動の地域特徴との関連性から、その矛盾を解決することを目的とする。明治初期の経済が移行経済であったという仮説を立て、地租の動学的な調整プロセスを描くモデルを作成した。また本論は明治8年から20年にいたるまでの26府県における世帯当たりの地租税収のデータを整理し、非線型回帰を通じて、各府県における農民的商品経済の発展度合いを反映するパラメーターα(生産要素の移動速度)とθ(生産要素の移動コスト)の値を推定した。結果として、激化事件だけに注目すれば「中間地帯論」がより適合しているが、自由民権運動の全体を見ると「農民的商品経済論」がより説得力があると考えられる。