著者
劉 時珍
出版者
一橋大学留学生センター
雑誌
一橋大学留学生センター紀要 (ISSN:1348768X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.59-71, 2009

中国の日本語教科書には例文が不自然なものが多いと言われている。しかし、どこが不自然か、不自然な原因は何かという研究はほとんどなされていない。本稿では、中国で出版されている『新編日語』という教科書の中の副詞の例文を調査データにし、副詞の使用が不自然になる場合について調査を行い、副詞の問題点を探った。本研究では、調査を2段階、すなわち自然さに関する母語話者の判断という調査Ⅰと、不自然さの原因の究明という調査Ⅱに分けて行った。その結果、副詞を説明する例文は述語との共起関係に配慮しながら提示される一方、副詞と例文そのものとの間に文体上・意味上などの整合性の面で齟齬が見られ、副詞の例文の不自然さの原因になっていることが明らかになった。また、調査結果に基づき、どの副詞に特に文体上の問題が多いか、どの副詞に特に意味上の整合性が足りないかをまとめ、教科書の中の副詞についてタイプ別に問題点を考察した。