著者
劉 楠
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.13-29, 2021 (Released:2021-04-01)

研究目的は、1960~1970年代生まれの父親を対象に、稼ぎ主責任とケアする男性性から父親像を掴むことと、男性性による男性問題を明かにすることである。中国山西省出身の父親13名を対象にインタビュー調査を行った。結果、以下の点が明かにされた。(1)父親役割は、子どもの「方向性を示す灯台のような存在」であること。中国現代社会の情勢、例えば、コネを使い地位向上を果たすこと、社会の両面性(プラス面とマイナス面「腐敗」)について、父親は子どもと冷静かつ客観的に議論することによって、子どもにより客観的な世界観を持たせることができた。父親が方向性を示す役割を持ち、母親は生活面での世話を担うという棲み分けがはっきりしている。(2)稼ぎ主責任は子どもの数が多いほどその思いが強い傾向にあること。長男の結婚などにより高額なお金が必要となるような時には親戚などから借りることが多い。なかには、生活費稼ぎのためギャンブル等に手を染める父親の事例もあった。よって、男性問題の解決を目指すには、女性、子どもがよりよい暮らしをするためにも、男性を含めたコンクルージョンサポート体制の構築が急務と示唆される。