著者
劉 芳卉
出版者
千葉大学大学院人文公共学府
雑誌
千葉大学人文公共学研究論集 = Journal of Studies on Humanities and Public Affairs of Chiba University (ISSN:24332291)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.130-151, 2018-03-29

[要旨] 本稿は日中両言語の感情表現における人称制限現象を対照し、それぞれの制限が解除される場合についての分析を行った。まず、日本語の人称制限現象に関して、人称制限が起こらないケースについての分析を行った。その際、人称制限が解除される方法は、大きく二つがあると分かった。一つは、文末にモダリティ形式が伴う文であり、二つ目はnon-reportive style (Kuroda (1979))の環境である。また、中国語にも人称制限現象が存在すること(表出副詞"真" と描写副詞"很" の使い分けなど)、そして、この人称制限が解除される方法は一つしかないことを示した。すなわち、non-reportive styleである三人称小説における地の文という環境である。これらの観察に基づき、本稿では、日中両言語の人称制限という現象を「証拠性」という概念に基づいて統一的に説明した。