著者
劉 蓉蓉
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.17-31, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
22

本研究は,中国の日本語補習授業校に通う日本人児童 (以下: 中国在住日本人児童) を対象に,彼らの日本語会話力をOral Proficiency Assessment for Bilingual Children (OBCテスト) を用いて調査したものである。それに加え,中国在住日本人児童と日本語モノリンガル児童の日本語会話力との比較を行った。また,中国在住日本人児童の家庭内のリテラシー活動,家庭内の言語使用を含む家庭言語環境について保護者へのアンケート調査を行い,これらを踏まえ,中国在住日本人児童の家庭言語環境と日本語会話力との関係を検証した。その結果,中国在住日本人児童の日本語会話力は日本語モノリンガル児童と比べて個人差が大きく,日本語の発音,語彙,文法,文の生成といった基礎言語面において,モノリンガル児童との差異が見られた。また,継承日本語の維持のために,家庭内のリテラシー活動はその環境づくりになり,日常会話の中で継承語で話しかけ継承語を使わせることはその有効な手段だと考えられる。