著者
劉 言
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.53-68, 2022-09-13 (Released:2022-09-14)
参考文献数
37

予測に基づく時系列の統計推測について考える.時系列の予測問題は調和可能安定過程を出発点として統一的に扱う.これにより,予測誤差と補間誤差はスペクトル密度関数の汎関数として表現することが可能である.スペクトル密度関数のモデルを当てはめることにより,予測誤差や補間誤差を最小にするコントラスト関数を導入する.多くの安定分布の確率密度関数は陽に表現できないため,時系列モデルの母数推定において最尤法を用いることが難しいが,コントラスト関数を用いれば,最小コントラスト推定量が母数の一致推定量となることが示せる.これに加えて,最小コントラスト推定量の漸近分布を示す.また,重要指標となる母数の仮説検定について,経験尤度比検定法を議論し,近年の理論的研究成果を与える.