著者
田村 真八郎 劔持 久仁子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.753-756, 1963 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

米粒各部分すなわち白米,ヌカ層,胚芽の総アミノ酸分布をみると(第3表),だいたい各アミノ醗の60~80%が白米部分に含まれており(チロシン,シスチン,プロリンは回収率が100%近くにならないので考察から除いた),ヌカ層には15~22%,胚芽には3~15%の各アミノ酸が分布している. 第5表に玄米,白米,ヌカ層,胚芽の総アミノ酸含量を16g窒素中の各アミノ酸g数に換算し,文献値とともに示した. 玄米の場合は著者らの結果は,平(6)の文献値よりも,リジン,スレオニン,プロリン,アラニン,バリン,イソロイシンでは低く,セリン,シスチン,フェニルアラニンでは高い測定値を示した.この原因は試料として用いた玄米の違いによるものか,アミノ酸定量法(カラムクロマト法と微生物定量法)の違いによるものかは明らかでない. 白米については著者らの測定値は木村(7),属(8)の報告よりも全般的に低い測定値を示した.これは著者らが白米よりタンパク質を抽出することなく塩酸加水分解したのに対し,文献値はタンパク質を分離してから加水分解しているための差であると考えられる.このことは著者らが第2報で報告したように,デンプン混合試料を加水分解してアミノ酸測定をする場合,測定値の低下のいちじるしいチロシン,アルギニンが文献値との差が大きいことからもうかがわれる.白米粉末をそのまま加水分解する方法と,白米粉末からタンパク質を分離して加水分解する方法のいずれがよいかは充分検討されていないが,前の方法ではアミノ酸がかなり破壊され回収率が悪くなることは明らかであり,また後の方法では白米のタンパク質を全部とりきることは困難なので,分離したタンパク質が白米の全タンパク質を代表できるかどうかに問題が残り,この両法で得られた測定値を慎重に検討して白米中の総アミノ酸含量を推定するのが妥当と思われる. ヌカ層,胚芽のアミノ酸含量に関しては,今後さらに測定値が発表されるのを待って検討するのがよいと考えられる. 米の遊離アミノ酸に関しては松下(10)が,またヌカについては西原ら(9)が報告しているが,著者らの測定はまだ予備的なものなので,今後さらに研究を続けた上で検討したいと考える. 玄米を90%にとう精し,白米,ヌカ層,胚芽に分け,おのおののアミノ酸含量を測定し各アミノ酸の分布率および回収率を計算した.