著者
若松 正志 加茂 正典
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、江戸時代に「神祇管領長上」として全国の神社・神職を支配した吉田神社において、その実務を担当し、また大嘗祭・新嘗祭など朝廷祭祀にも直接関与した、鈴鹿家について、現在ご当主のもとに伝来している資料(以下、鈴鹿家文書とする。文書以外に、絵図・モノもある)の整理・目録化を行い、内容を分析・検討することにより、鈴鹿家文書の史料的位置、吉田神社・鈴鹿家が果たした役割を明らかにすることを目的とした。研究代表者の若松は、数名の研究協力者と、鈴鹿家文書のうち、鈴鹿家の「江戸下り」(毎年2〜3月頃江戸に行き将軍に拝謁)関係史料約2000点と、幕末〜明治期の資料約450点について、整理と調査を行った。中性紙封筒への袋詰めは完了したが、目録化は約1000点にとどまり、残りの作業は今後の課題となった。また、鈴鹿家文書の伝来などについて各地に出張調査を行い、およその状況を把握することができた。研究分担者の加茂は、研究協力者の岡田芳幸と共に、鈴鹿家の宮廷祭祀関係資料について、月1回のペースで所蔵者宅を訪れ、一点毎の資料調書作成とデジタルカメラによる撮影、中性紙封筒への整理・保管という基礎作業を行い、全554点の資料調査を終了させ、「鈴鹿家所蔵大嘗祭・新嘗祭資料目録(第一次)」(平成17年8月。A4判126頁)をまとめた。これにより、かつて鳥越憲三郎・有坂隆道・島田竜雄編『大嘗祭史料 鈴鹿家文書』(柏書房、平成2年)において紹介された96点を大きく超える数の学界初見資料の伝襲が確認され、鈴鹿家宮廷祭祀関係資料(大嘗祭・新嘗祭・神嘗祭など)の全貌が初めて明らかになったのである。また、資料調査にもとづく論考も数編発表した。なお、上記の目録作成後、所蔵者の鈴鹿長雄氏から、加茂の本務校である皇學館大学神道博物館へ同家所蔵資料の寄託申し入れをいただき、平成17年12月、鈴鹿家文書が皇學館大学に寄託された。