- 著者
-
加葉田 大志朗
新谷 歩
- 出版者
- 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
- 雑誌
- 日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.1, pp.1-6, 2019-02-25 (Released:2019-03-12)
- 参考文献数
- 4
治療などの介入を研究対象者へ無作為(ランダム)に割り付けるランダム化比較試験(randomized control trial:RCT)では,介入群と対照群の背景因子は平均的に似通ったものとなる.日常臨床では治療を行うかどうかは臨床的判断によるため,各群への割り付けには一定の傾向が生じることが多い.そのため日常臨床から得られたデータのみを利用する観察研究においては,この治療を受ける傾向によって比較群間で背景因子に差異が生じてしまう.この背景因子の違いによってアウトカムの群間比較の結果にバイアスが生じることを交絡と呼び,観察研究ではこの交絡への対処が必須となる.交絡への基本的な統計的対処方法としては多変量回帰分析が利用されている.多変量回帰分析では介入因子以外の背景情報についても考慮することができるため,それらのアウトカムへの影響を差し引いた介入効果を推定できる.また多変量回帰分析と並んで,交絡への対処方法として広く活用されるようになった傾向スコア手法とあわせてその概要を紹介する.加えて,これらの手法について医学研究における不適切な利用が指摘されることもあるため,本稿ではその利用方法に関する基本的な注意事項についても言及する.