- 著者
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陳 黙
蔡 立義
加藤 たか子
和泉 俊一郎
樋口 雅司
加藤 幸雄
- 出版者
- 公益社団法人 日本繁殖生物学会
- 雑誌
- 日本繁殖生物学会 講演要旨集 第104回日本繁殖生物学会大会
- 巻号頁・発行日
- pp.206, 2011 (Released:2011-09-10)
【背景】我々は以前の本大会で、ブタFSHプロモーターにヘルペスウイルスの一つであるHSVチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を連結して作成したトランスジェニック(TG)ラットが雄性不妊を示す事を報告している。その原因を調べると、精巣では、FSHプロモーターに依存せずにウイルスTK遺伝子に内在する精巣特異的な転写開始点により異所性に円形精子細胞でHSV-TKが発現されることにより精子形成異常を示すことを確認した。つまり、ヘルペスウイルスに感染したヒトの精巣では、HSV-TKの発現により精子形成に影響が出て男性不妊になる可能性が考えられる事になる。そこで、男性不妊患者の精液から回収したDNAを調べる事で、ウイルス感染の有無を調べることにした。
【方法】今回は、ヒトの男性不妊患者153名(年齢21-40代)の精巣から採取した精液をより調製したDNAについて、Nested-PCR法による増幅反応を行い、増幅物については塩基配列の測定を行った。また、不妊患者の精液における精液量、精子数、精子運動性などの測定を行った。
【結果】検査した不妊患者でウイルスDNAが確認された。その感染率は、HSVが39例(26%)、CMVが33例(22%)で、EBVとHHVは共に4%以下であった。しかも、感染者全体(59名)の37%の感染者にウイルスの2重感染が認められ、そのほとんどはHSVとCMVの2重感染であった。一方、ウイルス感染者と非感染者の間には、疫学的に精子異常の差が認められなかった。
【考察と結語】不妊患者の精液にウイルスDNAを高頻度に検出した。しかも、その4割弱に2種類のウイルスが重感染していることを発見した。ウイルス感染者おける精子異常性には特に有意な差が認められなかった。つまり、非感染者とは原因が異なるにもかかわらず、男性不妊患者の精子は非感染の状態と同じと言うことになる。ウイルス感染者における不妊の機序を解明するには、1)HSV-TK遺伝子が精巣で実際に発現している事を確認することが急務で、その上で、2)HSV-TKの標的分子とその下流の出来事を調べる必要がある。