著者
加藤 明日香
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.197-206, 2016-08-10 (Released:2016-09-02)
参考文献数
41
被引用文献数
2 1

目的:国内外の2型糖尿病患者が経験するスティグマに関して,実践的な医療分野の視点から,今日までどのような研究が進められているのかを把握することを目的として,文献レビューを行う。方法:PubMed,MEDLINE,PsycINFO,CINAHL,医中誌,CiNiiの検索エンジンを用いた。文献検索に用いたキーワードは,PubMedとMEDLINE,PsycINFO,CINAHLでは“type 2 diabetes AND stigma”,医中誌とCiNiiでは「2型糖尿病ANDスティグマ」とした。選択論文は,1963年1月~2015年7月に発行された査読付き原著論文とした。結果:分析対象となる研究論文は合計15本であった。2型糖尿病患者が経験しているスティグマを主題として取り組んだ研究論文が2本,他に研究主題があり,その分析結果として2型糖尿病患者のスティグマが検出された研究論文が13本であった。研究デザインは,質的研究13本,量的研究2本であった。2型糖尿病患者におけるスティグマの影響は,診断前・診断直後の健康行動からすでに始まっており,その影響は治療開始後の自己管理行動に及び,長年にわたる闘病生活において,2型糖尿病患者が社会的サポートを受けることを難しくしていることが明らかとなった。考察:今後,2型糖尿病患者の自己管理行動を支援する介入研究に発展させていくためには,現在「スティグマ」という広い概念として研究されているところを,「実際のスティグマ」「感じられたスティグマ」「内在化されたスティグマ」の3つの概念に分け,それらを定量的に測定する2型糖尿病患者のための尺度を開発し,まず,その影響の大きさと分布を正確に明らかにした上で,最も有効な介入ポイントを特定していく必要があると考える。