著者
加藤 盛夫 今井 勝
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.253-259, 1996-06-05

食用カンナの高生産力を解明するための基礎として, 葉面積の形成と個葉光合成速度の葉齢および個体の生育に伴う変化を明らかにするため, 0.5m×1m(群落状態)および3m×3m(孤立状態)の栽植密度下で4月下旬から11月中旬まで筑波大学の実験圃場で栽培を行った. 食用カンナは生育中期には6-9日間隔で大型の葉身を展開するため, LAIが7になる7月下旬, 9になる8月中旬には, 上位4葉までの葉身で全葉面積の約70%を占めていた. 個葉の最大光合成速度は19.1μmol m^<-2>s^<-1>(6月9日)であったが, 生育が進むにつれて低下する傾向があった. 個体群の下位葉では葉面積指数の拡大する7月以降になると主に相互遮蔽により光合成速度は急激に低下した. 上位展開葉の光合成速度は1,000μmol m^<-2>S^<-1>PPFD以上の光強度でも光飽和しなかった. 葉冠内の葉面積構成及び各葉位の光合成速度から判断して, 食用カンナ個体群では生育中期以降, 上位4葉が乾物生産に大きな貢献をしていることが窺われた.