著者
酒井 保藏 石川 進 荷方 稔之 加藤 紀弘
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1日30m^3の水処理可能な大型の実験プラントを用いて、パイロットスケールでの磁化活性汚泥の実証実験をおこなった。最初沈殿池(約1m^3)、曝気槽(7.6m^3)、最終沈殿池(約1.5m^3)からなる活性汚泥プラントにおいて、曝気槽上部に小型の回転磁石ドラム(長さ80cm×直径30cm)を備えた磁気分離装置を1基設置し、大部分の高濃度の磁化活性汚泥を磁気分離により分離に、最終沈殿池でさらに残りのSS分を分離する磁気分離・沈降分離ハイブリッド方式を適用した磁化活性汚泥法について検討した。約5000〜10000mg/Lの高濃度汚泥を曝気槽に保持することで、自己消化による汚泥の減量を実現し、余剰汚泥を引き抜くことなく、半年間の実証試験に成功した。沈降分離槽から流出する最終的な処理水はCODCr=20〜30mg/L、SS=10〜20mg/Lと良好な処理水が得られた。また、汚泥滞留時間が長いことから、硝化が良好に行なわれることも確認された。7月に行なわれた下水道研究発表会ではポスター発表において最優秀賞を得た。また、10月に行なわれた磁気分離開発研究に関するワークショップでは、応用部門の優秀ポスター賞を得た。3月には、問い合わせのあった、イギリス・水処理企業まで出向き、国際的な共同研究・共同開発に関する打ち合わせを行なうことができた。パイロットプラントは世界初の実証規模での磁化活性汚泥法として、イギリスの磁気分離の著名研究者、荏原製作所、栗田工業などの多くの企業の見学を受けた。これらの結果は昨年3月28日にNature Science Update他に記事が掲載されたのをはじめ、6月にはアメリカ化学会のオンラインニュース誌、さらに7月にはアメリカ化学会のオンラインマガジン誌に繰り返し取り上げられるなど大きなインパクトを世界に与えたといえる。世界中の水環境関連のWebニュース、30誌以上で活性汚泥法の新しい技術として報道されている。