著者
牟田 和恵 古久保 さくら 伊田 久美子 熱田 敬子 荒木 菜穂 北村 文 岡野 八代 元橋 利恵
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ジェンダー平等実現のための新たな形・次元でのジェンダー・フェミニズム研究の構築を目的とし、調査研究・文献研究・実践活動の三つの方法論によって研究を行った。貧困やケアの偏在等の問題に関する新たなフェミニズム理論の重要性と、一見女性に焦点化していないように見える幅広い社会問題への関心や運動にとってのフェミニズムの有効性を確認した。また海外国内ともに「慰安婦」問題やセクハラ・性暴力と闘う運動を柱としてジェンダー平等に近づく研究と実践がエンパワメントされており、研究と運動の連携がジェンダー平等の実現には不可欠であることを再確認した。女性情報発信に資するため制作したwebサイトは今後も運営を行っていく。
著者
藤本 由香里 石田 仁 ウェルカー ジェームズ 長池 一美
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

BL文化はいまや世界各国に広がりつつあるが、その受容のあり方は、それぞれの国で現実のLGBTが置かれた状況によって明らかな違いがある。本研究では、各国のBL文化受容の実態を調査するとともに、それぞれの国でのLBGTの現実とフィクションとの距離のあり方を焦点とする。同時に、日本国内でのBL読者と非読者との間のLGBTに対する認識の差異等についての社会調査を実施し、両者の協力の可能性を検討する。
著者
野元 野元 広瀬 健一郎 前田 耕司 廣瀬 隆人 若園 雄志郎 清水 裕二 上野 昌之 慎 基成 套 図格 紅 桂蘭 ゲーマン ジェフ JENNIFER Hixson DAVID Adcock PAUL Hixson 洪 〓柔 SANDRA L Morrison
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

アイヌ民族教育の原理・制度、アイヌ民族教育に関する実践、海外の先住民族・少数民族の教育3つの研究課題の柱に沿って研究・調査行い、アイヌ民族の当事者が設立を求めているアイヌ民族学校、アイヌ民族大学などのアイヌ民族教育機関の具体的なイメージを持つとともに、管理・運営のためのアイヌ民族教育委員会制度や教育内容・方法について検討することができた
著者
池亀 彩 石坂 晋哉 田辺 明生 竹村 嘉晃
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、研究代表者・研究分担者によって、本研究のテーマであるボトムアップ型のさまざなな開発のあり方を記述・分析するためにそれぞれのフィールドワークが行われた他、インド人研究者を招いて研究会を行った。1:フィールドワーク:池亀は南インド・カルナータカ州における宗教リーダーの開発プロジェクトを調査した他、ダリトのリーダーによる活動も当該年度は調査を行った。また東南アジアへプランテーション移民として渡ったインド人コミュニティーについての歴史的調査も並行して行った。田辺はインド西部プーネ市近郊で部族出身の若者によるNGOの調査を行った。竹村はインド・ケーララ州、タミル・ナードゥ州およびシンガポールでインド舞踏の教授法とメディアとの関わりについて調査を行った。石坂はインド・ウッタランチャル州で自然農法運動の展開に関する調査を行った。2:研究会では、国立民族学博物館に客員教授として来日していたジャナキ・ナーヤル教授を招聘し、ジェンダーと近代開発について歴史的に考える研究会(開催日2017年10月22日、東京外国語大学本郷サテライト、東京外大南アジア研究拠点FINDASとの共催)を持った。当該年度は、代表者・分担者のそれぞれが多くの媒体で研究成果を積極的に発表した年でもあった。今後はそれぞれの研究を全体のテーマである「ポスト開発」という概念の発展へとどう結びつけるかが鍵となる。当該年度ではそこまでの概念のすり合わせは出来なかった。
著者
小路田 泰直 住友 陽文 小関 素明 岡田 知弘 小林 啓治 白木沢 旭児 澤 佳成 荒木田 岳 立石 雅昭 原田 政美 川瀬 光義 布川 弘 竹永 三男 張 貞旭 鬼嶋 淳 八木 正 西谷地 晴美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2011年3月11日の東日本大震災につづいて生じた原子力発電所の深刻な事故は、戦後、日本政治が長く取り組んできた原子力政策を頓挫させる、歴史的にきわめて重大な事件だった。この事件につながった原子力政策の歴史を解明することが、われわれの研究課題であった。原子力政策が保守派および革新派の合同プロジェクトとして、暗黙の合意を得てはじまったこと、またそれにもとづいて55年体制が形成されたことが、明らかにされた。すなわち、日本の戦後政治において、原子力政策は、たんなる電源開発にとどまらない、きわめて重大な政治的意義をもっていたことが解明されたのである。
著者
金 富子 中野 敏男 倉田 明子 橋本 雄一 吉田 ゆり子 澤田 ゆかり 野本 京子
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

まず、2年目の研究実績として、最大の成果といえるのは、初年度の成果をふまえて、2017年8月に本格的に中国東北へのフィールドワーク調査(長春、延辺、ハルピン、8泊9日)を実施したことだった。とくに延辺では、現地の研究者2名の全面的な協力によって、3日間にわたって日本人入植地と朝鮮人入植地をフィールドワーク調査することによって、両者の違いを現地で直接に経験しただけでなく、現地で当時を知る複数の経験者にインタビューすることができた。また、現地研究者との研究交流と写真論文集出版に向けた協力体制を深めることができた。なお、フィールドワーク調査の事前準備として、同年7月に中国東北への朝鮮人移民に関する専門研究者を招いて開いた公開研究会をもって認識を深め、さらに同年8月にはハルピンと万宝山事件の歴史と現在に関する研究分担者による内部研究会を開き、問題意識を共有した。また、フィールドワーク調査後の同年10月には、成果を共有するための記録集の作成と公開フォーラムを開催した。次に、2018年1月には、第3課題「『満洲』の社会と文化」を主題に関連して、中国から「満洲」文学の専門研究者を招き国際カンファレンスを開催するとともに、非公式の集まりを含めて、「満洲」に関する文学・文化の視点、現在のデジタル資料の利用方法などの研究交流を行った。さらに、この主題に関連して、同年3月に「満洲」のキリスト教史の専門研究者を招いて公開研究会を行い、「満洲」の宗教と欧米人という側面からテーマを深めた。以上のように、所定の計画通りに目標を達成することができた。
著者
實政 勲 中田 晴彦 堺 温哉
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

香料は古代文明発祥地のエジプトやインドにおいて紀元前から知られた存在で、美的効果やリラックス感を演出する有用物質である。ところが、近年人工香料による水質や魚類等の汚染が報告され、その生物蓄積性や環境リスクが懸念されるようになった。本研究は、人工香料による生態系およびヒトへの汚染状況とそのリスク評価を解析した。始めに有明海の海水と様々な栄養段階の海洋生物を採集・分析したところ、ほぼ全ての試料から環状型香料のHHCB(CAS#:1222-05-5)とAHTN(同:21145-77-7)が検出された。とくに、海洋生態系の高次捕食動物である海生哺乳類(イルカ)や鳥類(カモ・カモメ)から世界で初めてHHCBの蓄積を確認され、その生物濃縮係数(海水とイルカの濃度値)は12,000と比較的高値を示し。過去30年間に目本近海で採集したイルカを分析したところ、HHCB濃度は1980年代半ばから近年にかけて増加しており、香料汚染力観在も進行中であることがわかった。ヒトの脂肪および母乳を採集・分析したところ、いずれの試料からもHHCBが検出され、日本人における人工香料の汚染が初めて確認された。このことは、授乳により人工香料が母子間移行していることを示しており、化学物質に敏感な乳児への暴露リスクが懸念された。また、5種類の合成香料を対象に甲状腺ホルモンレセプターを介した細胞のアッセイを試みたところ、一部の物質がホルモン撹乱作用を有することが明らかになった。海洋生態系の高次物にまで生物濃縮され、さらに汚染の進行が窺える化学物質が見つかる例は最近では少なく、ヒトへの染拡散や乳幼児へのリスク、さらにホルモン撹乱作用の懸念を考慮すると、2003年に改正された化審法の理念を参照して一部の合成香料の製造・使用について何らかの制限を設ける時期に来ている。
著者
金 明秀 稲月 正 豊島 慎一郎 太郎丸 博 田中 重人 堤 要
出版者
京都光華女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究の中で実施された調査と、1995年に実施された「在日韓国人の社会成層と社会意識全国調査」および「社会階層と社会移動に関する全国調査」との比較分析に基づき、以下の諸点が明らかになった。(1)[文化資本に関する分析]日本人男性に比べて在日韓国人男性の文化資本は低いこと。父、母の学歴が高いほど出身家庭の文化資本は高まる傾向があること。出身家庭の文化資本が高いほど本人の学歴は高くなる傾向があること。(2)[在日韓国人女性の職業に関する分析]初職の企業規模は、9人以下の小規模の企業がほぼ半分を占めており、周辺セクターの労働市場に追いやられている。現職についても、9人以下の小規模な企業に従事する者が7割近く、さらに小規模企業への集中が強まっている。(3)[社会保障に関する分析]医療保険については、医療保険未加入者は加入者と比較して健康状態がよくない傾向が見られた。年金保険については、在日韓国人高齢者に分析を限定したところ、年金保険未加入者は、加入者より所得が低い傾向も見られた。(4)[母国とのネットワークに関する分析]民族への愛着や伝統への嗜好は、母国に親戚のいる人のほうが強い傾向にあることがわかった。また、母国語の使用や民族団体への参加においても、彼らはより積極的であることがわかった。しかし、母国に親戚をもつ人は日本人との付き合いが弱くなるのかと思われたが、むしろ彼らの間のほうが日本人との付き合いをもつ人が多くみられた。(5)[民族認識に関する分析]在日韓国人は民族を構成する要件として、(1)自分自身を韓国(朝鮮)人だと思う、意識的側面を強く重視しているが、(2)韓国生まれであることや人生の大部分を韓国で暮らしているという、場的側面はあまり重要視しておらず、(3)それら以外の要件は中程度に重要視している。どの要件を重要視するかは、世代のみである。
著者
茶谷 誠一 瀬畑 源 河西 秀哉 冨永 望 舟橋 正真 古川 隆久
出版者
志學館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

1948年6月から1953年12月までの激動期に初代宮内庁長官を務めた田島道治の資料群(「拝謁記」、「日記」、「関係資料」)を原文から翻刻して活字化し、それぞれ解説を付して出版する。また、資料の出版にとどまらず、編集作業を通して明らかになった事実をまとめ、シンポジウム開催と解説書の執筆により、学界から一般社会まで幅広い層に象徴天皇制形成期の昭和天皇と宮中の実態につき、研究成果を還元していく。
著者
福島 昭治 森村 圭一朗 鰐渕 英機 ALINA M Romanenko
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

ウクライナのチェルノブイリ原発事故後、周辺汚染地域では過去15年間で膀胱癌の発生頻度が約1.6倍に上昇したと報告されている。その原因として現在も土壌中に残存する低レベルCs137の長期間暴露が考えられる。我々は臨床的に膀胱がん症状のない汚染地域住民の膀胱粘膜に、上皮異形成や上皮内がんを含む膀胱がんの発生率が、汚染地域住民の24時間尿におけるCs137レベルにほぼ比例して上昇していることを見いだした。我々はまた、汚染地域住民の膀胱に上皮異形成や粘膜内癌を高頻度に伴う特異的な慢性増殖性膀胱炎を見いだしチェルノブイリ膀胱炎と命名した。その膀胱病変においてはp53,p21,サイクリンD1等、様々な癌関連遺伝子が異常発現していると共にiNOS, COX2なども異常発現しており、この地域の膀胱病変発生には酸化的ストレス傷害が深く関与することを証明した。さらに、原発事故後に認められた膀胱癌が事故前に同地域で得られた膀胱癌と比べp53遺伝子変異頻度が有意に低く、この地域の膀胱癌発生のメカニズムが一般的な膀胱発癌と異なった経路で発症する可能性が示唆されたため、近年その異常発現がヒト膀胱発癌に深く関与すると考えられているgrowth factor receptorの発現を免疫組織学的に検索した。その結果、抗FGF-R3、抗EGF-R1、抗EGF-R2抗体について汚染地域の症例は非汚染地域症例に比べ有意に高い染色性を示し、汚染地域住民の膀胱粘膜病変の発生にはこれらgrowth factor receptorの発現も関与していることが判明した。以上、これまでの研究によりチェルノブイリ原発事故後の周辺汚染地域住民には膀胱癌が多発する傾向にあり、またその発生原因に関しては現在一般的に考えられている膀胱発癌経路と異なった経路で発生する可能性があることが示された。
著者
今井 博久 濱砂 良一 山口 昌俊 篠原 久枝 藤井 良宜 廣岡 憲造
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

わが国において初めて高校生の無症候性クラミジア感染率を明らかにした。女子高校生は13.1%、男子高校生は6.7%であった。ティーンエイジャーにおける蔓延は間違いないことが示された。国際的に比較すると、わが国の感染率は欧米の国々より高く、おそらく先進諸国の中で最も感染が拡大していることが示唆された。今回の対象者の多くが高校2年生と3年生であった。東京都で実施された2002年の性経験率は男子高校生の3年生で37.3%、女子高校生の3年生で45.6%を報告されており、主に2年生と3年生を対象にした本調査の性経験率と東京都のそれとの間に大きな差はなかった。年齢別では、女子は16歳が高い感染率で17.3%であった。高校生における性感染症の予防介入教育を高校2年生3年生で実施しても時間的に遅く予防の効果が期待できず、おそらく、高校1年生あるいは中学3年生で実施することがより一層効果的であることを示唆している。男女ともに性的パートナー数が増えれば増えるほど感染率が高くなり、重要な危険因子と考えられた。女子では約300人弱の対象者が「5人以上のパートナー数」と回答し100人程度が感染していた。対象者数が小さくないので、感染率は概ね正確と判断してよいだろう。初性交年齢と感染率の関係を見ると、女子では年齢が低いほど感染率が高くなる傾向であった。14歳以下すなわち中学生のときに初性交を経験した女子高校生は、6人にひとりは感染していたことになる。性感染症の蔓延防止対策の実施に向けて(1)初めて具体的なデータが伴って若年者、特にティーンエイジャーの無症状の感染者が多いことが明らかになった、(2)対策の焦点を当てるべき対象者をティーンエイジャーとすべきである、(3)性別、年齢、危険因子が明らかになったので、こうしたデータに基づいた蔓延予防対策の施策を実施することが期待される、(4)今後は地元医師会、関係学会、学校教育関係者等が協力し合って緊急に対策を講じる、といったことが必要となろう。
著者
森山 優 森 茂樹 宮杉 浩泰 小谷 賢
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(1)日本、アメリカ、イギリス、オーストラリアの文書館を調査し、外交・インテリジェンス関係の一次史料を収集した。従来の研究では見逃されてきた多数の貴重な史料を発掘できた(2)これらの史料を整理して、その一部をデータベース化した。(3)先行研究を収集して、問題点を検討した。(4)収集した史料を総合し、日本の情報戦に関する理解を深化させた。(5)成果の一部を学会報告・論文・書籍、マスコミ取材等で発表・発信し、学界のみならず一般社会に向けて研究の意義を強調した。
著者
有賀 早苗 有賀 寛芳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2,6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。
著者
高野 陽太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、外国語副作用foreign language side effectが外国語を使用する日常的な場面でも生じるのかどうかを実験的に調べた。外国語副作用とは、母語に比べて習熟度の低い外国語を使用している最中には、一時的に思考力(非言語的情報処理をおこなう能力)が低下するという現象である。この現象は、Takano & Noda (1993,1995)によって初めて実証的に立証され、その生起機序が理論的に説明された。本研究は、外国語を使用する日常的な場面でもこの外国語副作用が生じるかどうかを調べる研究の一環としておこなったものである。外国語を使用する日常的な場面では、思考の材料は言語的に与えられることが多く、その場合には、思考は非言語的情報処理だけでなく、言語処理も含まれる可能性がある。言い換えると、思考に内言が伴う可能性がある。この内言は、処理の容易な母語である可能性が高い。かりに、思考に母語の内言が伴うとすると、外国語副作用は生じなくなる可能性がある。同時に2つ以上の情報処理をおこなう場合、一般に、処理が互いに類似しているほど相互の干渉は大きくなることが知られている。思考に伴う内言が母語の場合、外言として母語を使用しているときの方が外国語を使用しているときよりも干渉が大きくなり、思考成績は低下することになる。これが外国語副作用を打ち消し、外国語副作用が生じなくなるという可能性が考えられるのである。この可能性を検討するため、実験1では、思考課題に定言三段論法の妥当性判断を使用し、実験2では、知能検査の中で言語性知能を測定するために用いられる問題を使用した。被験者(日本人大学生および大学院生)は、これらの思考課題を言語課題と同時に遂行した。いずれの実験においても、思考課題の成績は、言語課題を母語でおこなったときより、外国語(英語)でおこなったときの方が低下していた。すなわち、外国語副作用が生じていた。従って、これらの実験結果から、思考に内言が伴う場合の多い日常的な外国語使用場面においても、外国語副作用は生じ得ることが明らかになった。
著者
安達 登 近藤 修 角田 恒雄 神澤 秀明
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

研究期間中に、査読つき英文論文6編、査読つき和文論文5編を出版した。成果の中で特筆すべきものとして、江戸時代アイヌのミトコンドリアDNAについて世界初の論文を公表したことが挙げられる。この研究で、アイヌは縄文時代人の遺伝的特徴を色濃く受け継ぐ他に、シベリア先住民族および本州日本人の遺伝的影響も想像以上に大きいことが明らかとなり、日本列島人の成立を説明する二重構造モデルに一部修正が必要なことを初めて実証した。さらに、北海道船泊遺跡出土縄文後期人骨について、世界初となる現代人レベルでの高精度ゲノム解析に成功した。このデータは今後日本列島人の成立を考える上で根幹となる重要なものである。
著者
中澤 達哉 近藤 和彦 森原 隆 小山 哲 小森 宏美 池田 嘉郎 古谷 大輔 小原 淳 阿南 大
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、「王のいる共和政」の国際比較を通じて、近代ヨーロッパ共和主義の再検討を行った。この結果、ハンガリー、ドイツ、ポーランド、スウェーデン、オーストリアにおいて、「王のいる共和政」というジャコバン思想と運動が存在したことを解明した。さらに、これらの地域における「王のいる共和政」論の源流を、16世紀の政治的人文主義(political humanism)による古代ローマ共和政の近世的再解釈に見出した。加えて、この思想が啓蒙絶対王政を正当化するための主導的原理として機能したことを実証した。このようにして、この原理が1790年代の中・東欧において広範に拡大することになったのである。
著者
川岡 勉 片桐 昭彦 新谷 和之 古野 貢 遠藤 ゆり子 佐々木 倫朗 野田 泰三
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の活動の柱は、全国の守護の受発給文書の調査・収集作業であり、活字史料の検索・集約と並んで、対象史料を収蔵している研究機関・各種施設・個人などへの出張調査を分担して行った。こうして集めた史料をもとに、国別または守護ごとのデータベースを作成し、これを収録したCD―ROMを添付した報告書を作成した。データベースを読み解く上で便宜を図るために、手引きとなる解説文も掲載した。本研究のもう1つの活動の柱は、各自が調査・収集した史料やその分析結果を持ち寄り、共同で検討を加える研究会・史料検討会であり、年に2~3回の割合で会合をもった。途中でシンポジウムも開催して研究成果を広く公開・発信した。
著者
伊東 孝 鈴木 伸治 武部 健一 津田 剛 原口 征人 藤井 三樹夫 鈴木 盛明 小野田 滋 為国 孝敏
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

近年、「ハードな土木」に対し、土木政策や事業決定のプロセスなど「ソフトな土木」を解明することも土木史の重要な課題と考えられるようになった。本研究は、日本の高度経済成長の牽引役を果たしてきた高速道路に焦点をあて、欧米で普及しているオーラルヒストリーの手法を用いて、1)関係者がご存命のうちに、話を聞き、整理し、資料として後世に残すこと、2)あわせて土木史研究に適用できる方法論を確立することを目的としている。本研究成果の概要は、次の通りである。本研究は、土木学会土木史研究委員会オーラル・ヒストリー研究小委員会がおこなった。1)インタヴューの実施及び証言記録の作成と保管本研究では、4箇年の研究期間をとおして、戦後の道路行政の黎明期を代表する3人の技術官僚にインタヴューを実施し、証言記録の作成と保管をおこなった。(1)平成14〜15年度は、高橋国一郎氏(元建設省事務次官・元日本道路公団総裁):通算7回(2)平成15〜16年度は、井上孝氏(元建設省事務次官・元参議院議員・元国土庁長官):通算6回*井上氏は平成16年5月以降、体調をくずされ、11月に逝去された。今回のオーラルヒストリー・インタヴューが氏の最後のお仕事になった。(3)平成16〜17年度は、山根孟氏(元建設省道路局長・元本州四国連絡橋公団総裁):通算10回2)土木史研究におけるオーラルヒストリー手法の構築3人のインタヴュー対象者へのインタヴューをとおして、オーラルヒストリーの方法論構築に向けての内容蓄積と検討をおこなった。そして最終年度に、5冊の報告書(「実践編」3冊と「理論編」2冊)を作成した。それぞれのインタヴューは、「実践編」として3冊の速記録にまとめた。また蓄積したオーラルヒストリーの方法論を「総括編」とし、ワン・デイ・セミナー(16年度開催)の速記録とともに、2冊の「理論編」としてまとめた。
著者
武田 雅哉 濱田 麻矢 越野 剛 加部 勇一郎 田村 容子 向後 恵里子 藤井 得弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、中国における「乳房」の表象を、中華圏・ロシア・日本の各地域における表象と比較し、非西欧圏・社会主義圏における「乳房」イメージの生成、交流、変遷について明らかにするものである。分析の中心となるのは、19世紀から20世紀にかけての画報(絵入り新聞)・連環画(絵物語)・ポスターなどの図像資料、および新聞記事や文学などの文字資料である。研究成果は、株式会社ワコールの主催する「乳房文化研究会」の定例研究会「アジアにおける乳房観 Part3~中国人女性の身体意識と文化・ファッション~」において発表したほか、書籍として刊行予定である。
著者
吉田 文 村澤 昌崇 濱中 淳子 二宮 祐 田中 正弘 福留 東土 黄 梅英 李 敏
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、文系大学院修士課程の修了者が労働市場においてどのように評価されるのかを、日米中の比較として実施した。分析の枠組みは、大学院教育―学生の資質・目的―労働市場の3点の関連構造を明らかにすることにあり、3者のサイクルのどこにネックがあるかを明らかにすることにある。分析の結果、中国やアメリカと比較して、日本においては、大学院教育は職業人教育をめざす工夫をせず、学生は大学院で獲得したスキルを職場で活用することを重視せず、労働市場は大学院教育よりも企業内訓練に対する信頼を置くという、3者が孤立し、関連性のサイクルが回らない構造があることが明らかになった。