- 著者
-
勝田 忠広
- 出版者
- 明治大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
初年度は大きく二つの研究を行った。1) まず日本の安全目標の概要と課題を明らかにし、将来の原子力発電利用のあり方について調査を行った結果、以下の成果が得られた。i. 現行の安全目標は福島事故の実績から求められているが、その意思決定プロセスは不明瞭で、またそれが十分であるか分析は行われていない。ii.リスクと交換関係にあるはずの原子力発電の価値は不在で、かつ社会的価値観の向上により、単純な原子力利用ありきの安全目標の存在は困難となっている。iii. そのためにも対話は重要だが、その動きは原子力規制委員会や事業者にはみられない。2) 続いて福島事故対応の現状と課題を調査した。「安全性」を議論する上では、実際的な政府の対応能力の有無が国民にとっては重要な指標となる。その結果、以下の成果が得られた。i. 福島県の避難区域から解除された富岡町での放射能現地測定の結果、いまだ住民が懸念する程度の多くのセシウムが除染終了場所から検出されることが明らかとなった。ii.文献調査等から、3号内の使用済み燃料取り出し等がはじまった一方で作業者2名のがんが福島事故の作業が原因であると認定され、また2年ぶりに避難区域の一部がまた解除されたが解除区域に帰還する住民は少ないなど、国民の政府に対する不信感をあおるような状況が続いていることが明らかとなった。3) 福島事故後の安全性向上の取り組みの一つである新検査制度について調査を行った。i. 有識者として原子力規制庁の会議に参加し、規制の取り組みについて意見を述べると同時に、規制者や非規制者の現状の取り組みや課題について整理を行った。ii. 九州電力川内原発の新検査制度の取り組み状況を視察し、その現状と課題について調査を行った。