著者
本吉 洋一 勝田 豊
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.44-81, 2011-03-28

第51次隊は,越冬隊28名,夏隊34名,さらに同行者28名の合計85名で構成された.新南極観測船「しらせ」の就航に伴い,搭載ヘリコプターの更新や,コンテナ主体の輸送方式など,新しいシステムがいくつか導入された.「しらせ」は2009年11月10日に晴海埠頭を出航したが,その際,観測隊同行者5名が「しらせ」に乗船して出発した.それに先立ち,11月5日に設営先遣隊5名が成田空港を出発し,ドロンイングモードランド航空網(DROMLAN)を利用して,11月13日に昭和基地入りを果たした.また,11月10日には,セール・ロンダーネ山地調査隊のうち10名が成田空港を出発し,DROMLANを利用して11月20日までにプリンセス・エリザベス基地(ベルギー)に集結した.観測隊本隊は,11月24日に成田空港を出発,25日にはフリーマントル港にて「しらせ」に乗船し,外国人同行者も合流した.「しらせ」は11月29日にフリーマントル港を出航し,海洋観測を実施しつつ12月15日に氷縁に到着した.12月18日に昭和基地第一便が飛び,20日までに緊急物資および準備空輸,内陸ドームふじ旅行隊,沿岸調査チームの一部を送り出した後,「しらせ」は一旦昭和基地沖を離れクラウン湾に回航した.12月23日から25日までクラウン湾にてセール・ロンダーネ山地調査隊の隕石チーム5名と物資を送り出した後,「しらせ」は再び昭和基地を目指した.例年になく厚い氷と積雪に苦労したが,1月10日に昭和基地接岸を果たした.以後,2月13日の昭和基地最終便までの間,第51次越冬成立に必要な物資と越冬隊員の交代を滞りなく完遂した.昭和基地および周辺露岩域では,無人磁力計ネットワーク観測,南極湖沼における生物観測,GPS観測・重力観測などが実施された.設営系では,「しらせ」の輸送システムに対応したコンテナヤード整備作業,自然エネルギー棟基礎工事,電離層40mデルタアンテナ建設,第1廃棄物保管庫・仮作業棟解体工事などが実施された.なお,「しらせ」の昭和基地接岸が遅れたこともあり,昭和基地での一部の夏作業は実施することが出来なかった.第51次隊は,昭和基地方面での活動の他に,セール・ロンダーネ山地およびドームふじ基地方面での野外オペレーションも実施した.セール・ロンダーネ山地地学調査隊は,DROMLANを利用して地質・地形チームが11月中に現地入りした.その後,「しらせ」によって隕石チームが12月下旬に合流し,ベルギー隊の隊員も含め,合計17名が山地内に展開した.調査終了後,地質チームはDROMLANにより帰国の途につき,2月15日に成田空港に帰国した.地形・隕石チームは,2月2日にDROMLANによりS17経由で「しらせ」に収容された.内陸ドームふじ旅行隊は,第50次越冬隊3名を含む合計8名で構成され,12月19日に「しらせ」からS16に移動,22日にS16を出発しドームふじ基地を目指した.1月8日にドームふじ基地に到着,以後1月25日まで浅層氷床掘削やコア搬出を行いドームふじ基地を出発,2月11日にS16から「しらせ」に収容された.「しらせ」は2月13日に第51次夏隊・同行者および第50次越冬隊を乗せて昭和基地を離岸し,以後,アムンゼン湾リーセル・ラルセン山,ケープダンレーでの観測,さらに中国・中山基地訪問などを実施した後,3月17日にシドニーに入港した.観測隊は3月19日成田空港に帰国した.「しらせ」は4月9日,晴海埠頭に帰港した.