- 著者
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北村 優子
- 出版者
- 文教大学
- 雑誌
- 文教大学国際学部紀要 (ISSN:09173072)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.1, pp.65-78, 2008-07
- 被引用文献数
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1.問題意識 日本経済の課題の一つとして財政再建・健全化が国際的にも指摘されているとは言え、日本の経済力は世界トップレベルにあることは広く認知されていよう。しかし、日本もかつては援助受益国であった。近代化の議論にもしばしば出てくるが日本が直面しているジェンダー問題に目を向けた場合、日本の開発過程は果たして`理想'通りと言えるのであろうか。2.テーマと構成 本論文では、日本が経済成長を遂げる中で置き去りにされているジェンダー平等化のジレンマについて論じたい。まず、経済成長を最優先にした開発では不十分である点と近代化の議論について触れ、次に`traditional ideas'と日本のジェンダー不平等の関連性に注目する。そして、政府の方針がどのような影響を持ってきたかについて述べたい。また、今後の日本の開発過程でジェンダー不平等がもたらすマイナス面、女性と男性それぞれが直面している問題にも目を向ける。最後に、エンパワーメントアプローチが解決策になりうるのかについて論じい。3.結果 女性の労働環境には多くの制限があることが様々なデータからうかがえ、ジェンダー問題の一例として挙げられる。女性は`良き妻として、良き母として'という`traditional ideas'に縛られることが少なからずあるのではないだろうか。また、男性も`男らしさ、一家の大黒柱として'という観念のもとで複雑な状況に置かれていることも理解する必要がある。ジェンダー平等化のジレンマを解決する為に今までに、様々な法律が施行されてはいるがどれも特効薬になっているとは言いがたい。人々の考え方や慣習などを政策にもっと反映させる必要がある。また、「自らの可能性に気付き自ら行動を起す」というエンパワーメントアプローチが一つの解決策になるのではないかと考えられる。