著者
北村 恵理奈 柴田 祥江 松原 斎樹
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.13-29, 2016-04-01 (Released:2016-04-18)
参考文献数
28
被引用文献数
4

冬期のヒートショックは高齢者に健康被害をもたらす恐れがあるのでその対策は急務である.本研究は居住者視点からヒートショック対策を検討するために,(1)トイレ・脱衣室の温度認知調査,(2)住宅内の温湿度測定,(3)簡易断熱の効果測定を実施した.結果,(1)高齢者の温度認知はあまり正しくなかった.その理由は,高齢者の温熱感覚が低下していることと,滞在時間が短いためと推測される.(2)各住戸の温度の実測値は 17℃以下,高齢者に限ると 10℃以下が多かった.(3)簡易断熱調査では,全住宅でわずかな熱的性能と居住者の熱的快適感の向上をもたらした.居住者に室内温熱環境の改善への意欲を引き出せた事例が観察された.温度計による室温の正しい認知と,簡易な断熱による効果の認知は,居住者視点の有効なヒートショック対策と考えられる.今後は対策実施の有効性,経済的費用など具体的な情報発信が重要である.
著者
柴田 祥江 北村 恵理奈 松原 斎樹
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-50, 2018-06-01 (Released:2018-08-25)
参考文献数
37

高齢者の住宅内での熱中症対策は喫緊の課題である.本研究は,在宅高齢者の(1)夏期の室内温熱環境実態,(2)熱中症対策意識と行動の調査,(3)体感温度の認知による行動変容の可能性を検討した.(1)74軒の住宅内5箇所の温湿度測定(湿度は居間のみ)の結果,熱中症発生が危惧される環境であった.(2) 熱中症対策意識は,「関心がある」77.3%,「少し関心がある」18.7%で,関心が高い.対策行動実施率は「水分補給」96.0%,「涼しい服装」69.3%,「エアコン使用」42.7%であった.(3)事前の体感温度認知は「昼間の居間」,「夜間の寝室」とも予測値と実測値の相関は低く,あまり正しく把握できていなかった.温湿度測定・確認後の,熱中症対策意識と行動の変化では,予測値と実測値との乖離は小さくなる変化があった.その結果,体感温度を認知(見える化)後は,「エアコン使用」が60.0%と有意に増加し,行動変容が確認された.熱中症対策における「体感温度の認知」の有効性が示唆された.
著者
北村 恵理奈 柴田 祥江 松原 斎樹
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.17-20, 2012-11-21

京都市南部の集合住宅4軒を対象に,すだれによる日射遮蔽や簡易内窓による断熱を施し,わずかな費用で省エネ性や快適性を得ることを試みた。施工前後の温湿度測定とエアコンの電力消費量測定,測定終了後にヒアリング調査を実施した。ヒアリング調査では「涼しくなった」という声が聞かれたが,実際に電力消費量が減少した住宅は2軒であり,他2軒は増加していた。電力消費量が減少した住宅ではエアコンの設定温度に変化はないが使用時間は短縮し,エネルギー削減につながった。増加した住宅では,断熱を施したことにより居住者が冷房効率の向上を実感し,エアコン使用時間が増加した。このことより,断熱性能の向上は電力消費量の減少には必ずしもつながらないことが示された。しかし,全住宅が簡易断熱及びすだれ設置による効果を感じていた。