著者
北添 徹朗
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.109-110, 1994-03-07

教師がいなくても自立的に学習する行為は動物界ではよく見うけられる. 人間は生まれた時は歩けないが, 筋肉が発達し神経組織が整備されてくるにつれて自立的に学習しながら, おそらく誰からも教えられなくても歩けるようになる. 雀の雛は屋根裏の巣から地面に落ちる間に, 飛び方を学習してしまう. (多分すでに予備的な訓練をしているのであろうが). また, 興味深いことは,ーつの動物の歩き方にもいくつかのモードがあることである. 馬など四本足の動物では, 並足, 速走, 駆足等, それぞれ足の運び方が違うモードがある. それぞれの動物には, ハード的な制約のもとで, 運動を制御するソフト的な機構が備わっており, 一つ一つの運動を評価しながら最適な効率を得られる運動モードを選んでいるのであろう. これまで自立的学習については, 中野馨氏による先駆的研究があるが, ここでは二足歩行を例にあげながら次の点に主眼をおいて研究を行なう. (1)安定性の問題. 歩行は一見簡単な行為の繰り返しのように見えるが, 実は自立学習の観点から見ればかなり難しい問題を含む. 自立学習の場合は, スタートの歩幅, 各足のスピードについて自由に選びながら学習するわけであるが, そのためには一つの歩幅や足のスピードの組について周期的に安定した歩行が保証されている必要がある. (2)(1)が保証された場合において, 歩幅や歩行スピードを変えながら, 最も効率のよい歩き方を自立学習する方法. (3)一つの歩行モードにおいて最適な解が見つかった場合, 他のモードにいかに移ることができるか. 一つの最適運動モードは評価関数のローカルミニマムになっているであろう. したがって, 一つのローカルミニマムから, 他のローカルミニマムにいかにして自立的に移行するかという問題である. 以下においては最も単純な二足からなるロボットをコンピュータ上でシミュレーションしながら以上の諸点について論する.