著者
平山 尚 名和 徹 浪越 為八 十倉 健彦 下江 俊成 坂口 孝作
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.63-68, 2011-12-28 (Released:2012-02-22)
参考文献数
21

症例は60歳代,男性.2006年4月より尋常性乾癬に対し,合成レチノイド製剤(エトレチナート)内服と活性型ビタミンD3(以下VD3)外用剤(マキサカルシトール)を併用していた.2010年8月下旬より水様性下痢,食欲不振が出現し,ウイルス性腸炎の診断で近医で保存的加療を行われていた.その後,下痢症状は改善するも全身倦怠感が持続するため,近医より当科に紹介受診となった.来院時,尿素窒素(BUN)158.2mg/dL,血清クレアチニン(Cr)11.16mg/dL,カリウム(K)8.1mEq/L,重炭酸イオン(HCO3-)15.6mmol/L,補正カルシウム(Ca)12.4mg/dLと急性腎不全,高K血症,代謝性アシドーシス,高Ca血症を認めたため入院,緊急血液透析を施行した.長期にわたりVD3外用剤を使用されていたことから,VD3外用剤による高Ca血症とそれに伴う急性腎不全と推察された.VD3外用剤と合成レチノイド製剤内服を中止し,計5回血液透析を実施後に離脱した.その後,腎機能はCr 2.46mg/dLまで改善し第58病日に退院となった.VD3外用剤の副作用として,高Ca血症と腎機能障害の報告例はいくつか認めるが,その多くは外用剤の中止と高Ca血症に対する治療で軽快しており,緊急血液透析を要した報告はない.今回,われわれはVD3外用剤の副作用によって,緊急血液透析を要した1例を経験したので報告する.