著者
鐘ケ江 寿美子 市丸 徳美 千々岩 親幸 Fleming Richard 小泉 俊三
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.323-329, 2008
被引用文献数
1

<b>目的</b>:Care Planning Assessment Tool(CPAT)はオーストラリアで開発され,認知症ケアを意識した介護者による高齢者の総合的機能評価尺度である.日本語版CPATを作成し,信頼性·妥当性を検証した.<b>方法</b>:対象者は199名(男性58名;女性141名)で介護老人保健施設,グループホームに入居,あるいはデイケアやデイサービスに通所し,研究の承諾を得た高齢者である.調査期間は平成18年8月より9月までである.<b>結果</b>:日本語版CPATは,(1)コミュニケーション,(2)身体機能,(3)身辺自立,(4)混乱,(5)行動障害,(6)社会的交流,(7)精神症状,(8)介護依存度の8大項目より構成され,61小項目を含む.各小項目は介護ニーズを0∼3点で示し,大項目毎にその合計点数が%表示される.日本語版CPATには「家族との交流」に関する小項目を原文に追加し,CPAT原作者と翻訳妥当性を検証し,詳細な使用手引書を作成した.評定者は対象者をケアする看護,介護職員で,CPATについて約2.5時間の研修を受けた.各大項目のCronbach's αは0.74∼0.95であった.10組の評定者間一致に関する重み付きκ値は平均0.6.14名の評定者における各大項目の評定者内の平均スコア差は0.4∼3.6%であった.認知症の中核症状を示す「混乱」とMMSEの相関係数は-0.90(p<0.01)であり,「身体機能」,「身辺自立」,「介護依存度」と介護保険「介護度」との相関係数は各々0.68, 0.72, 0.62(p<0.01)であった.日常生活動作能力評価尺度(N-ADL)と関連するCPAT小項目の相関も良好であった.<b>結論</b>:日本語版CPATは高齢者の身体機能,認知機能,精神行動障害,その他日常生活機能を総合的に把握し,介護ニーズを簡便に評価できる尺度であると考えられる.<br>