著者
早坂 菊子 千本 恵子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.182-189, 1997-04-20
参考文献数
14

一卵性双生児の不一致症例を対象として, 吃音に関する母子間のD-Cモデル (要求一許容性モデル) によるスピーチの関係性を検討した.スピーチの速度はOSR (音節/60sec.) , スピーチの長さはMLU (文節/発話数) で算出した.母子のOSRとMLUの差が小さい程, 要求と許容性は一致し, 子供に無理な負担がかかっていないと判断した.治療期間を大きく3期に分け, それぞれ1, II, III期間とした.MLUでは1期では差が大きかったが, II期, III期となるに従って母親のMLUは減少し, 子供は増加してきた.OSRでは1期においては両者ともに速度が速すぎ, 子供に負担がかかっていたが, II期には, ゆっくり話すように母親に要請したため, 母親の速度が減少し, 子供もそれにともなって減少した.MLU, OSRともに, I期からIII期に進むに従ってその差が減少し, 要求と許容量の調和がとれてきていることが示されている.非流暢性も消失し, 安定しているため, 追跡期での両者の差の拡大は問題とならないように考えられる.