著者
林 由佳 千田 好子 狩山玲子 光畑 律子
出版者
学校法人山陽学園 山陽学園大学・山陽学園短期大学
雑誌
山陽論叢 (ISSN:13410350)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.145-153, 2009 (Released:2018-11-28)

気管内吸引カテーテル(カテーテル)は単回使用を原則とするが,在宅ケアにおいては再使用されることが多い。本研究では,カテーテルの洗浄および保管方法に関するエビデンスを得ることを目的として実験研究を行った。Pseudomonas aeruginosa PAO1株を10^6cfu/mLに調製した試験痰で汚染カテーテルを作製し,水道水20mLまたは100mLで吸引洗浄した。続いて、洗浄後のカテーテル付着菌を解離させ、生菌数を測定した。次に,洗浄後のカテーテルを,0.01%グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)500mLに24時間浸漬したのち不活化剤で処理したもの,蓋付容器に24時間乾燥保管したもの,それぞれのカテーテル付着菌を解離させて生菌数測定した。その結果,水道水20mLで洗浄した場合の生菌数(cfu/mL)は、洗浄直後2.6×10^7,CHG浸漬後27,乾燥保管後1.2×10^5と,CHG浸漬保管後の生菌数が最も少なかった。水道水100mLで洗浄した場合の生菌数(cfu/mL)は,洗浄直後4.2×10^6,CHG浸漬後0.8,乾燥保管後2.3×10^4であった。水道水100mLで汚染カテーテルを洗浄した場合,浸漬・乾燥保管とも20mLを使用した場合の生菌数に比較して1オーダー少なかった。以上の成績より,使用後のカテーテルは,100mL以上の水道水で洗浄後,消毒剤に浸漬保管する方法が適当と考えられた。106
著者
形山 優子 山本 満寿美 千田 好子 狩山 玲子
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.97-103, 2008-05-23
被引用文献数
3 4 1

急性期病院に治療目的で入院した誤嚥性肺炎患者9名の口腔内の状態と口腔ケアおよび口腔と吸引痰からの検出菌に関する実態調査を行った.患者の平均年齢は77歳で,7名に誤嚥性肺炎の既往歴があった.患者の口腔内の状態は,入院時約半数に舌苔や口腔内乾燥がみられたが,退院時は改善傾向にあった.しかし,入院後の口腔ケアは,大半の患者に1日1回実施しているのが実状であり,十分な口腔内清浄度が保たれていなかった.入院時,入院後3~5日目,退院時の3回,日和見感染菌検査用キット(BML社)を使用し,口腔と吸引痰から検体を採取した.口腔または吸引痰からの検出菌(患者数)は,入院時:<i>Candida</i> sp. (4名),MRSA, <i>Serratia marcescens</i> (各3名),<i>Pseudomonas aeruginosa</i>, <i>Klebsiella pneumoniae</i> (各2名),入院後3~5日目:MRSA (5名),<i>Candida</i> sp. (2名),<i>P. aeruginosa</i>, <i>K. pneumoniae</i>, <i>S. marcescens</i> (各1名),退院時:MRSA (4名),<i>P. aeruginosa</i>, <i>K. pneumoniae</i>, <i>Candida</i> sp. (各2名),MSSA (1名)であった.本研究において,MRSAが最も多く検出され,入院時の3名に比して,入院後3~5日目には5名,退院時4名と増加しており,院内感染が疑われた.退院時に定着菌あるいは残存菌が検出された6名の患者は,再度誤嚥性肺炎に罹患する可能性が高いことから,口腔ケアへの積極的介入が必要とされた.また,耐性菌蔓延防止のためには,医療施設内のみならず地域医療連携による感染対策を行うことが重要である.<br>