著者
半戸 里江 安保 充 大久保 明
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.695-699, 2003-09-05
被引用文献数
1 5

本研究では,最適かつ詳細な分析手法の確立に加え,環境化学的視点から実試料の測定を実施し,分析値を解析することで,更に新たな知見を得ることを目的とした.海水中内分泌撹乱化学物質の定量に関して,簡便な方法でより正確な測定値を算出するために,固相抽出剤のコンディショニング法や溶出法の改良を行った.コンディショニング法に関して,実験に用いる水に由来する汚染を防ぐ目的で,水を使用しないコンディショニング法を考案した.この方法と従来法(精製水を使用するコンディショニング法)の回収率の差は1%以内であった.溶出法に関して,従来法よりも回収率が良く,ばらつきも少ないアセトン,ジクロロメタン,ヘキサンを順に通液する溶出法を提案した.実試料として,東京湾と千葉県沖の黒潮流域の海面表層水を測定した.東京湾ではノニルフェノール(mix)とビスフェノールAが数十〜百数十ng/lで検出された.千葉県沖での測定の結果,幾つかの測定対象物質が検出されたが,東京湾と比較して10分の1以下の濃度であった.