著者
半澤 利一
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.1-12, 2011

<p>MRIモデルを活用した少年事件調査3例を検証することで,少年調査における理解と,その過程でなされる保護的措置におけるシステムズ・アプローチの用法について検討した。いずれの事例においても保護者が少年の自立を求め,叱責や罰など不適切な働きかけを繰り返したことで,少年に苛立ちや抑圧感などがうっ積し,被害者意識が醸成されたものと理解した。このように親子の言動の背後にある動機や思い入れを探ることが,少年のあり方や保護者の信念,相互の力動関係を把握する要点となる。</p><p>また,親子関係の悪循環を行動水準でとらえることで,少年の問題行動を解決しようとする保護者の努力自体が問題の持続を招き,それが再び保護者の不適切な働きかけを引き起こすという偽解決を把握することにもなる。いずれの事例でも,リフレイミングにより行動の意味付けを変え,具体的で受け入れやすい課題を提示して介入することで,審判までの短期間に問題が改善した。MRIモデルは,問題を具体的に明確にすることを治療の端緒とするなど少年調査と近似する部分もあるが,非行や少年についての説明が求められる少年調査とは目的が異なるので,時機と局面を見極めて活用したい。</p>