著者
南 了太
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1_85-1_92, 2021-01-31 (Released:2021-03-15)
参考文献数
39

本論は,人文・社会系産官学連携の現状に関する考察である.1995年に「科学技術基本法」が制定され,四半世紀の間,理工・生物系分野に偏重した産官学連携が推進されてきた.近年,人文・社会系分野の知識の活用が望まされる一方,人文・社会系分野のいくつかの事例は見当たるもののこれまで十分な考察がなされてこなかった.そこで,政策や官民の人材の状況,大学の研究支援者,共同研究数・金額,先行研究より現状の考察を行った.その結果,人文・社会系分野の共同研究金額件数は全体の2%で,日本の公的機関における専門別研究者の内,人文・社会系分野の研究者は3%で,企業における人文・社会系分野の研究者は1.3%であった.また,大学における人文・社会系分野の産官学連携の支援者は8%であった.理工・生物系分野に比して,人文・社会系分野はリソース投入が僅かであり支援体制の在り方そのものを考える必要がある.本視点は今後人文・社会系産官学連携を推進する際の基礎データとして参考になるものだと考える.
著者
南 了太
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.2_42-2_54, 2022-06-30 (Released:2022-08-02)
参考文献数
19

本論は,どれだけの大学教員が企業役員を兼業・就任し,企業経営に関与しているかについて考察するものである.これまでの産官学連携は,研究開発を目的に理工・生物系分野と関わりの深い共同研究数や特許件数などの指標をもって考察されることが一般的であった.その一方で,大学教員がどれだけ企業経営に関与しているかに関する実証研究はなされてこなかった.そこで本論文では,企業役員会において大学の教員がどれだけ経営に関与しているかを調査した.その結果,売上高上位200社の内,108社に171名の大学教員が関与していた.大学別では,私立大学115名(67%),国立大学50名(29%),公立大学5名(3%)の順番で企業役員会に関与していた.学問分野別では,人文社会系分野129名(75%),理工・生物系分野32名(19%)の順番で企業役員会に関与していた.以上の調査結果より,多くの大学教員が企業の役員を兼業・就任し,産官学連携していることや,特に人文社会系分野の教員が経営関与し産官学連携を行っていることがわかった.