著者
土居 忠 田中 信悟 佐藤 康裕 太田 英敏 南 伸弥 藤見 章仁 蟹澤 祐司 田村 文人 平川 昌宏 小野 薫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.501-507, 2010 (Released:2010-10-07)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

脂肪性肝疾患(FLD)の発生に及ぼすアルコール摂取の影響には不明な点が残されている.今回我々は2008年1月から12月までに腹部超音波検査を含む健康診断を受診した3185名を対象に脂肪肝の頻度に対するアルコール摂取の影響を多重ロジスティック回帰分析により解析した.内臓脂肪性肥満,空腹時高血糖,脂質異常症はいずれも脂肪肝頻度の増加と関連していた.1日アルコール摂取量20 g未満(少量飲酒群),20 g以上から40 g未満(軽度飲酒群)および40 g以上から60 g未満(中等度飲酒群)では脂肪肝のオッズ比は有意に低下した.男女別に飲酒の影響を検討したところ,男性では軽度飲酒群から中等度飲酒群におけるFLDの調整オッズ比は非飲酒群および1日アルコール摂取量60 g以上の多量飲酒群より低かった.一方,女性ではアルコール摂取の影響は明らかでなかった.以上の結果からFLDに及ぼす飲酒の影響には性差があり,男性では軽度ないし中等度までのアルコール摂取は過栄養性FLDの発生を抑制する可能性が示唆された.