著者
笹山 幸治 後藤 和大 南良 義和
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.433-436, 2006-12-01 (Released:2011-07-04)
参考文献数
7

超低体温循環停止下に逆行性脳循環法を併用した症例において,術後の脳合併症を臨床例で検討した。対象は2001年1月~2005年12月に胸部大動脈瘤手術を施行した151症例とした。咽頭温20℃で循環停止し,逆行性脳循環を血液温18℃,灌流量5~10mL/kgで施行した。上大静脈圧を15~20mmHgで維持した。結果,循環停止時間33±13min,脳逆行性時間19±15min,脳梗塞などの合併症は19症例,病院死亡4症例であった。体外循環管理による事故や合併症はなく,操作によるストレスは感じられなかった。術後24時間以上の覚醒遅延は26症例(17.2%),脳合併症は19症例(12.6%)に併発した。脳合併症が発生した症例の平均循環停止時間は38minであり,全症例の平均循環停止時間33minで有意は見られなかった。そこで,危険因子を多変量解析した結果,人工血管置換の範囲が弓部に及んだ症例で有意(p<0.05)に脳合併症が発生していた。弓部置換をしない症例では脳分離体外循環法より逆行性脳循環法を選択することが,特別な体外循環回路を必要とせず,簡素で安全に施行できると考える。