著者
南雲 修司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.343, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)

2021年8月号の特集は「図書館とゲームのいま」です。欧米の図書館では,ゲームを図書館資料として扱う取り組みが一般的に行われていますが,国内でも,公共図書館を中心として,同様の取り組みを行う図書館が増えてきています。一言でゲームと言っても様々ですが,囲碁・将棋などの「伝統ゲーム」だけでなく,「ボードゲーム」や「デジタルゲーム」,「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)」なども対象としているのが近年の取り組みの特徴です。取り組みの内容も,館内利用や体験イベントの開催に留まらず,図書館の情報資源としてゲームを収集・整理して館外貸出を行っている事例など幅広くなってきています。一方,図書館でゲームを扱うことについては,その目的・意義が,一般の図書館利用者はもとより,図書館関係者にも十分に浸透しているとは言い難い状況かと思います。そこで今回の特集では,図書館とゲームの関わりについて,様々な視点でご執筆いただきました。まず,日向良和氏より,図書館とゲームの関わりについて,海外の事例も交えた近年の動向,情報資源としてのゲームの位置付け,図書館でゲームを扱うことの意義や効果,今後の展望についてご解説いただきました。高倉暁大氏にはイベント開催の豊富なご経験から,公共図書館における事例を中心に,イベントの目的や効果,開催にあたっての課題についてご紹介いただきました。実際にボードゲームの館外貸出を行われている中札内村図書館の小山洋子氏,杉浦慶美氏には,ボードゲームの館外貸出を始めた経緯や狙い,実際の利用状況や反響,運用上の課題についてご紹介いただきました。井上奈智氏には,実際に図書館でアナログゲームを導入する際の,情報収集や選定,購入手続きを進めるにあたって,どのような情報やツールを用いることができるか,ご解説いただきました。福田一史氏には,ビデオゲームを収集・保存するために必要不可欠となる目録について,立命館大学ゲーム研究センターのゲーム保存の事例を通じて,そのデータモデルやデータ公開の手法についてご詳説いただきました。本特集が,図書館でゲームを扱う意義やサービス上の位置付けを考える参考資料として,また実際の導入を検討する際の足掛かりとなれば幸いです。さらにこうした新しい取り組みを通して,これからの図書館のあり方を再考するきっかけとなりましたら望外の喜びです。(会誌編集担当委員:南雲修司(主査),今満亨崇,大橋拓真,中川紗央里)