著者
西原 史暁
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.448-453, 2017-09-01 (Released:2017-09-01)

本稿では整然データという概念について紹介し,それがどのように有用かを議論し,その限界についても触れる。整然データとは,①個々の値が1つのセルをなす,②個々の変数が1つの列をなす,③個々の観測が1つの行をなす,④個々の観測ユニットの類型が1つの表をなすという条件を満たす表型のデータである。これは,データ利用者にとって有用な概念であり,特にデータ分析用のプログラミング言語であるRを使う際には重要になってくる。この概念はデータ利用者だけでなく,データ提供者にとっても有用なものであり,データ共有の際にも応用できる。
著者
大谷 周平 坂東 慶太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.513-519, 2018-10-01 (Released:2018-10-01)

Sci-Hubとは,6,450万件以上もの学術論文のフルテキスト(全文)を誰もが無料でダウンロードできる論文海賊サイトである。Sci-Hubからダウンロードできる論文には,学術雑誌に掲載された有料論文の約85%が含まれており,Sci-Hubは学術出版社の著作権を侵害する違法サイトである。大学図書館の契約する電子ジャーナル,OAジャーナル,機関リポジトリ,プレプリントサーバーなど法的に問題ない論文サイトが在る中で,世界中から1日に35万件以上の論文がSci-Hubを通じてダウンロードされている。本稿では先ずSci-Hubの概要・仕組み・世界的な動向について述べる。次いで2017年にSci-Hubからダウンロードされた論文のログデータを分析し,国内におけるSci-Hub利用実態の調査結果を報告する。栗山による2016年調査と比較すると,Sci-Hubの利用数やSci-Hubの利用が確認された都市数は増加していた。また,Sci-Hubでダウンロードされているのは有料論文だけではなくOA論文が約20%を占めていること,クッキーの情報から約80%のユーザーは1回のみSci-Hubを利用している状況も明らかになった。
著者
冨澤 かな 木村 拓 成田 健太郎 永井 正勝 中村 覚 福島 幸宏
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.129-134, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)

東京大学附属図書館U-PARL(アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門)は,本学所蔵資料から選定した漢籍・碑帖拓本の資料画像をFlickr上で公開している。資料のデジタル化とアーカイブ構築のあり方を模索した結果,限られたリソースでも実現と持続が可能な,小さい構成でありながら,広域的な学術基盤整備と断絶せず,高度な研究利用にも展開しうる,デジタルアーカイブの「裾野のモデル」を実現しうる方策として選択したものである。その経緯と現状及び今後の展望について,特に漢籍・碑帖拓本資料の統合メタデータ策定,CCライセンス表示,OmekaとIIIFを利用した研究環境構築の試みに焦点をあてて論ずる。
著者
酒井 昌夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.80-84, 1995-02-01 (Released:2017-05-26)
参考文献数
4

図書館における図書の廃棄は,図書収容能力の限界という消極的な面からだけで取り上げるべきではない。廃棄の目的は種種の面で,図書館運営の向上に寄与することにある。その面から積極的に取り上げるべきである。図書館で廃棄が円滑に行われないのは,館員の心理的抵抗感による面が大きい。この排除には,廃棄基準の制定と関係者の合意・了解を得ることが必要である。上記の方法で,毎年円滑に廃棄を行っている仁愛女子短期大学附属図書館の実状についての説明を記載。
著者
長山 泰介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.431-435, 1983
被引用文献数
2

情報という言葉は今日広く使われるようになっており,この言葉の起源を調べた。森鴎外が明治20年前後クラウゼビィツの「戦争論」の翻訳に造語したのが最初と思われる。この言葉を用いた背景には福沢諭吉の思想も影響あったと思われる。その後軍事用語として用いられ,鴎外の小説にも出てくるが,一般の辞書に出てくるのは大正の終りから昭和にかけてである。軍事用語としては諜報の意味も含まれていたが,戦後は薄れた。一般に漢字という表意文字の組合せは,言葉から概念を規定することがあるので,情報という語の意味を漢字からも調べた。現在は各分野で学術用語としても多様に使われている。
著者
江草 由佳 高久 雅生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.361-367, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

教科書LODは,国立教育政策研究所教育図書館や教科書研究センター附属教科書図書館が長年かけて組織化してきた書誌情報をまとめてLOD化したものである。1992年施行の学習指導要領以降の検定教科書を対象として,書誌事項と教科等の関連情報をLOD化し,2018年3月現在,7,257タイトルの教科書情報,RDFデータとして157,297トリプルを公開している。本稿では教科書LODの開発および公開を通して得た知見を紹介する。
著者
吉田 正高
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.398-401, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)

我が国の戦後のコンテンツ文化(漫画,アニメーション,特撮,ゲームなど)における様々な物理的蓄積について,先行する歴史「資料」の保存管理も念頭に置きながら,コンテンツ文化における「資料」の位置づけと特性,保存管理,さらに展示について,これまでの経緯と今後の課題について概説した。
著者
是住 久美子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.615-618, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)

職場内自主学習グループ「ししょまろはん」は,業務では出来ないメンバーのアイデアをいくつか実現させてきた。「ししょまろはん」は,司書としての専門性を活かしつつ,みんなの役に立ち,自分たちも楽しんで取り組めるアイデアを出し合い,それを試すことが出来る場であり,正職員や非常勤職員の関係を越えて対等に意見を出し合える職場内のサードプレイスにもなっている。また,ウィキペディアタウンなどの外部のコミュニティ活動に司書として参加し,役割を果たすことで新たな図書館の可能性に気付くこともある。取り組みの一部は,外からの評価や中の理解を得て,業務として取り組むことができるものも出始めている。ボトムアップでやりたいことを仕事に近づける一つの方法として事例を紹介する。
著者
山口 真也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.566-571, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)

本稿は,読書通帳サービスでの貸出記録の取扱について,個人情報保護,または「図書館の自由」との関わりから論じることを目的としている。読書通帳サービスには,履歴を残したいというニーズと図書館の理念との対立を解決する方法として評価できる面もあるが,これまでの貸出記録の利活用議論を生かしていない部分もあるように思われる。以上の問題意識の下で,導入事例のリソースや通帳の記載項目の分析,導入館への取材等をもとに課題を検討した結果,①通帳サーバーでの貸出記録の保有期間の短縮化,②選択的記帳機能の追加,③通帳上での貸出記録の保有期間や個人情報の管理責任に関する説明の記載,④価格欄の必要性の再検討,を提案した。
著者
佐藤 翔
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.115-121, 2016-03-01 (Released:2016-04-01)

近代の学術コミュニケーションを最も特徴づけているのは査読制度の存在である。しかし増大し続ける研究者数とその生産論文数に,査読制度は対応できておらず,限界を迎えつつある。その結果,従来から存在した,査読者による不正や査読者のバイアス等の問題に加え,近年では査読者の不足,詐称査読,投稿者による不正等の新たな問題が起きている。これらの問題に対応するため,Publons やポータブル査読,オープン査読,査読の質保障等の新たな取り組みが現れている。しかしこれらの延命措置によって査読制度を維持し続けることができるのか否かは現状,未知数である。
著者
古賀 崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.48-53, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)

本稿では国際的動向を踏まえつつ,日本におけるデジタルアーカイブのゆくえを考えるための論点を提示した。すなわち,アーカイブズ領域でうたわれてきた「証拠的価値」や,デジタル・スカラーシップの進展とともに意識すべき「学術研究上のルール」を踏まえつつ,デジタル技術のポテンシャルを生かした「より深い利用」を促すため,どのようなかたちでデジタルアーカイブを構築・運用するのが望ましいか,ということを,本稿では論じた。国際的標準・規格や,図書館での「ディスカバリ・サービス」といった横断的・包括的検索システムとの関係も,考慮すべき論点に含まれる。
著者
大谷 裕
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.258-264, 2010
参考文献数
15
被引用文献数
1

PubMedをめぐる近年の大きな動向として2009年10月のインターフェイスの変更およびこれに付随した2010年2月の追加修正が挙げられる。本稿ではリニューアルされたPubMedの基本的な使い方および近年普及しているEBMの実践に必要なエビデンスに基づいた文献の検索について述べる。文献検索については,EBMの5つのステップを踏まえたPI(E)COの作成,MeSHを用いた検索タームの選択,エビデンスレベルを意識した研究デザインの絞り込みについて実例を交えて述べる。また併せて,日本語をMeSHに翻訳するフリーオンライン辞書WebLSD(ライフサイエンス辞書)を紹介する。
著者
永崎 研宣
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.61-66, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)

デジタル文化資料のWebでの流通の仕方を抜本的に改革し,より効果的効率的に共有するための規格,IIIFが研究図書館を発信源として国際的に広く支持を集めるようになってきており,英国図書館やフランス国立図書館をはじめ,多くの関連機関がこれに積極的に関わるようになっている。本稿では,IIIFの初期段階の構想を採り上げ,それが現在にどのように実現されているかを明らかにする。そして,IIIFが現在提供する様々な利便性について紹介するとともに,現在国内外でどのように広まっているか,その広がりがどういった状況をもたらし得るか,について検討する。さらに,人文学向けのテクスト資料のデジタル化に関するデファクト標準であるTEIについても触れ,両者の対比と今後の可能性を提示する。最後に,デジタル文化資料の国際的な規格に日本が積極的に関わっていくことの意義を述べる。
著者
水野 翔彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-1, 2018-01-01 (Released:2018-01-01)

今月号の特集は「拡散する『図書館』」です。図書館の建物,所蔵資料,職員を指して「図書館の三要素」とすることは広く知られています。しかし,一方で巡回文庫,家庭文庫,移動図書館,緑陰図書館といった,必ずしも三要素すべてを前提としない取り組みも古くから実践されてきています。図書館を取り巻く社会や制度・政策の変化,情報技術の発展,利用者の生活や研究スタイルの変化など,変わりゆく環境の中で,どのように図書館を運営し,利用者へサービスを届けるのか。三要素すべてを前提としない「図書館」を実践する取り組みは現在もなお進化し続けています。企画の検討開始時には,移動図書館や分館など主に空間的な意味での「拡散」という観点で検討をしていましたが,エンベディッド・ライブラリアンやヒューマンライブラリーなど様々な事例を検討する中で,「図書館」という概念自体が伝統的な図書館の手から離れ,自発的に変化しつつある状況が見えてきました。本特集では,社会の中で自発的に広がり変容する「図書館」の姿を「拡散」という語であらわし,「どのように,また誰によって『図書館』は実践されうるのか」という観点の特集としました。総論では,議論のための前提として,慶應義塾大学の松本直樹先生に図書館の基本的機能や要素に関わる新たな状況について,国内外の制度上の動向とサービスの観点から整理していただきました。つづいて,十文字学園女子大学の石川敬史先生には,公立図書館による移動図書館や各種の「はたらく自動車」に関する豊富な事例から「移動する活動」の特質と可能性について論じていただきました。京都ノートルダム女子大学の鎌田均先生には北米の図書館界で活躍するエンベディッド・ライブラリアンを題材として,その背景となっている図書館環境の変化や既存の図書館サービスへの影響について述べていただきました。最後に明治大学の横田雅弘先生からは,人間が図書館資料として扱われ利用者へ貸し出されるヒューマンライブラリーの事例からその意味と効果について,またヒューマンライブラリーでの経験から「人と歴史の記憶装置」としての図書館について論じていただきました。図書館の最前線,あるいはその外側で起こりつつある様々な「図書館」の事例を通じて,読者のみなさまの考える図書館像について見つめなおすきっかけとしていただければと思います。(会誌編集担当委員:水野翔彦(主査),久松薫子,古橋英枝,長屋俊)
著者
山﨑 美和
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.619-622, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)

IT技術の加速度的な進歩とともに,インフォプロを取り巻く環境と役割は大きく変化し続けている。その変化にいつでも対応できるよう,スキルアップやブラッシュアップ,人的ネットワークを広げる機会として,また人材教育として,活用してほしいINFOSTA研修事業を紹介する。