著者
博 砂川
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.59-70, 1988-08-10

東京大学付属図書館所蔵の『幸若』が、数多い『清水冠者物語』の中で、特異なテキストであることはよく知られている。従来、この物語の成立に関与した者として、一遍智真の系譜に繋る時衆が想定されて来た。しかし、詳細な内部徴証の検討の結果、筆者は、下野の豪族宇都宮氏の保護下にあった一向俊聖の系譜に繋る時衆が、この物語の成立に関与したと想定する。