著者
卿 瑞
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.164-183, 2018 (Released:2021-08-28)
参考文献数
18

地方債市場の自由化が進行するなか,2006年9月に個別条件交渉方式が正式に導入された。金融市場での情報の非対称性を解消して資金調達のコストを削減するために,地方政府は依頼格付けを積極的に取得するようになった。なかには,2つの格付会社に依頼し,二重格付けを取得する自治体もある。二重格付けの取得原因として地方債の引受金融機関からの要求,あるいは地方政府の習慣などが考えられるが,ほかに経済的な理由があるのかを明らかにすることも重要である。そこで,本稿は市場公募地方債のデータを用いて,二重格付けが地方政府の発行コストに与える効果を定量的に検証した。分析の結果,二重格付けは発行コストに有意に負の影響を与えている。自治体が二重格付けを取得することは合理的であると考えられる。