著者
大田 一郎 原 憲昭
出版者
熊本電波工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,コイルやトランスを使わずに,コンデンサとICスイッチだけで電圧変換できるスイッチトキャパシタ(SC)回路を用いて,超小型軽量のACアダプタを実現させる.平成17年度には,研究の最終年度で,過渡応答試験とワールドワイド入力の対応について検証を行った.電源投入時と瞬時停電時の過渡応答試験を行った結果,電源投入時の過渡応答では,従来のSC電源に比べ,突入電流を半分以下に減少させることができた.即ち,従来のSC電源(電子情報通信学会論文誌,vol.J76-C-II, no.6,pp.422-431,June 1993参照)では,300μFのキャパシタ4個を同時に商用電源に接続するのに比べ,提案回路では全波整流後の平滑キャパシタが30μFと小さいので,ソフトスタート回路を付加しなくても大きな突入電流を防ぐことができる.瞬時停電の応答は,従来方式の総容量1,200μFに対して,提案方式の総容量は180μFと約117に軽減しているので,出力の時定数が117に減少して全負荷時では半周期の瞬時停電でも出力電圧を維持することができない.なお,復帰後の応答は突入電流が小さく良好である.次に,世界中の電源電圧に無調整で対応できるACアダプタにする必要があるので,入力電圧を100V〜240V,周波数を50〜60Hzと変化させた場合の特性を明らかにする.個別部品で実験回路を組んでいるため,配線の引き回しにより,電源部では雑音を発生しやすく,制御部では雑音を拾いやすい回路になっている.このため入力電圧を高くすると,制御回路が誤動作したため,まだ実験での検証を終えていない.今回の試作では個別部品による動作の検証,および,計算機シミュレーションによる特性解析を行ったが,今後,制御回路の誤動作を防ぐため,キャパシタ以外の全ての素子をICチップ化して,実用化の見通しを検証したいと思っている.